包装作業の流れ

 医薬品の包装は、単に製品を包むだけでなく、光や湿気から製品を守る「保護機能」と、正しい情報を医療現場に伝える「識別機能」を担う重要な工程である。一般的に、薬剤が直接接触する「一次包装」と、一次包装品を個装箱等に収納する「二次包装」に大別される。



包装指図書の発行とラインクリアランス


 包装工程は、承認された「包装指図記録書」の発行から開始される。
 同書には、使用する包装資材、生産数量、製造番号(ロットNo.)、使用期限、印字内容などが詳細に規定されている。


 作業開始前には、必ず「ラインクリアランス(Line Clearance)」を実施する。
 これは、前ロットで使用した製品、資材、文書類が製造ライン上に一切残っていないことを点検し、清掃状態を保証する作業である。医薬品製造における異種品混入(ミックスアップ)防止の重要ルールとして位置づけられている。


包装資材・表示材料の受入と収支管理


 倉庫から出庫された資材(ラベル、個装箱、添付文書、容器など)が、指図書の指定と一致しているか、現物と厳密に照合する。


 特に、ラベルや添付文書といった「表示材料」の管理は極めて厳格に行われる。
 「受入数量 = 使用数量 + 廃棄(損紙・サンプル)数量 + 残余数量」
 この収支計算(Reconciliation)が完全に一致しなければ、当該ロットの包装工程を完了することはできない。


ラベル枚数管理


 【表示材料の管理が重要である理由】
 ラベルが「1枚余る」という事象は、貼付されるべき製品に貼られていない(無表示品流出の)リスクを示唆する。反対に「1枚足りない」事象は、二重貼付やライン外への紛失・流出リスクを意味する。いずれも重大な品質事故(回収等)に直結するため、1枚単位での厳密な管理が要求される。


製造環境と交差汚染の管理


 包装作業室は、作業内容に応じて適切な環境管理ゾーンに区分される。
 隣接するライン間での製品混同や交差汚染(クロスコンタミネーション)を防止するため、物理的なパーティションによる分離や、明確なロット表示が行われる。また、一次包装室(充填室)など薬剤が外気に露出するエリアは、製剤室と同等の清浄度(クリーンルーム)で管理される。


包装作業プロセス(Packaging Process)


 実際の包装作業は、自動化およびインライン化された設備を用いて、以下の手順で実施される。ただし、製品特性や製造規模に応じて一部工程は半自動または手作業で行われる場合もある。



 @充填・閉塞(一次包装)
 製剤(錠剤、カプセル剤、液剤等)を一次包装容器(PTPシート、バイアル、アンプル等)に充填し、密封する工程である。本工程は、製品の品質、有効性および安全性を維持するためのバリア機能を付与する重要工程であり、無菌性や安定性の確保が求められる。必要に応じて、ピンホール検査やリークテストなどの気密性確認試験が実施される。


 Aラベリング・印字(表示工程)
 一次包装容器に対し、ラベル貼付または直接印字を行う工程である。製造番号(ロット番号)および使用期限の表示は、医薬品のトレーサビリティ確保の観点から必須である。近年では、GS1コード等のバーコード印字と同時に、高精度カメラを用いた全数印字検査(文字欠け、かすれ、誤認識の検出)が標準的に実施されている。


 B個装箱への封入(二次包装)
 一次包装品を個装箱へ封入する工程であり、必要に応じて添付文書または電子化された添付文書へのアクセス手段(QRコード表示等)を同梱または表示する。添付物の欠品、異品混入を防止するため、バーコード照合や重量選別機(ウェイトチェッカー)による全数質量確認が行われる。本工程は自動化される場合が多いが、少量生産品や特殊製剤では手作業で実施されることもある。


 C梱包(ケーシング)
 個装箱を規定数量ごとにまとめ、段ボールケースへ梱包し封かんする工程である。この梱包単位が、物流および出荷管理における最小単位となる。


最終検査と出荷判定


 包装が完了した製品は、品質管理部門(QC)による最終検査(抜取試験)に供される。
 外観、内容物の入数、印字の完全性、重量などが規格に適合しているかを確認する。


 最終的に、すべての製造記録書および試験記録を品質保証部門(QA)が照査・評価し、承認された製品のみが「出荷可(Release)」となり、市場への出荷が許可される。


包装工程に関する主な用語解説


一次包装
(Primary Packaging)
医薬品(製剤)に直接接触する包装。PTPシート、バイアル、アンプル、点眼容器などが該当する。薬剤と相互作用を起こさず、品質を保持できる材質選定が不可欠である。
二次包装
(Secondary Packaging)
一次包装された製品を保護し、表示機能を持たせるための包装。個装箱、添付文書、ラベル等が該当する。
ラインクリアランス
(Line Clearance)
製造開始前や品種切り替え時に、前工程の製品・資材・文書類が一切残留していないことを確認・除去する作業。GMPにおける基本かつ最重要動作の一つ。
収支計算(照合)
(Reconciliation)
製造に使用した資材(特にラベル等の表示資材)や製品について、投入量と産出量の整合性を確認する計算。許容基準を超える差異が生じた場合、原因が究明されるまで出荷判定を行うことはできない。
GS1コード
(Global Standard 1)
国際標準のバーコード。調剤包装単位や販売包装単位ごとに付与され、商品コード、使用期限、製造番号などの情報が格納される。医療過誤の防止や流通トレーサビリティの確保に活用される。