固形剤製造の流れ

医薬品の固形剤(錠剤、カプセルなど)の製造プロセスは、以下の手順に基づいて行われる。

 

 

医薬品製造

 

原料の調達

 

 固形剤の製造には、有効成分である原薬や製剤に使用される添加剤など、必要な原料を調達する。

 

粉砕と混合、湿潤化と造粒

 

 原薬と添加剤を粉砕し、粉末状にして均一に混合する。

 

 この段階で、適切な剤型(錠剤、カプセルなど)に応じた配合比率を保つことが重要である。

 

 粉砕した混合物を湿潤化し、造粒する。湿潤化は、添加剤を含んだ粉末に水や溶液を添加し、粒子を形成して固める工程である。

 

 この工程により、粒子の形状とサイズを制御し、錠剤やカプセルの形成を容易にする。

 

 

 秤量ひょうりょうとは?】

 

 秤量作業は、粉末状の原薬や添加剤を用いる際に特に重要である。

 

 誤った量の原料を使用すると、製品の均一性や品質に影響を及ぼす可能性がある。そのため、厳密な計量が必要となる。

 

 原薬や添加物などの各原料をふるいにかけ、粉砕するなど事前に処理を行い、決められた量を正確に量る。

 

 

医薬品製造

 

 造粒ぞうりゅうとは?】

 

 秤量した原料を扱いやすくするため、粉末の状態から顆粒の状態に加工する。これを造粒という。

 

 原料に精製水などの結合剤を加え、高速で混ぜ合わせて顆粒にしている。

 

 

医薬品製造

 

 造粒工程で、粒を一定の大きさにすることで、次の工程で粉末の取り扱いやすさを向上させるなどの目的がある。

 

 混合こんごうとは?】

 

 造粒した顆粒は、混合室でコンテナごと回転して均一に混ぜ合わせる。

 

 整えられた粉末を後から添加する添加物と一緒に混合する。

 

 

医薬品製造

 

 秤量工程で正確に計りとった原料を、1錠・1カプセルごとに均等に配分できるようにするためである。

 

 

錠剤成形(オプション: カプセル充填)

 

 湿潤化された原料がある程度の硬さと形状を持ったら、錠剤成形機を使用して錠剤に成形する。

 

 一方で、カプセルを使用する場合は、原料をカプセルに充填する工程が行われる。

 

 

 打錠だじょうとは?】

 

 均一に混ぜ合わせた顆粒を打錠機に入れ、高速で回転する「うす」と「きね」で成型する。

 

 成型した錠剤は定期的に自動サンプリングを行い、質量、厚み、硬度を測定し、打錠機が正確に稼動していることを確認する。

 

 金属検知機で金属の混入がないことも確認する。

 

 

医薬品製造

 

 カプセル剤の場合は、高速で回転する充填機で、空のカプセルに顆粒を一定量充填し、キャップを閉めて完成する。

 

 

コーティング、印刷(オプション)

 

 一部の錠剤は、外観や性質を改善するためにコーティングされることがある。

 

 これにより、匂いや味のマスキング、保護、見た目の改善などが可能である。

 

 また、錠剤がコーティングされた後、その表面に必要な情報や文字を印刷することがある。印刷は、製品の識別や情報提供のために行われる。

 

 これにより、患者や医療従事者が正確な医薬品を識別し、適切に使用することができる。

 

 

 【コーティングとは?】

 

 崩れやすいものや苦みのあるくすりは、打錠した錠剤にフィルムコーティング機で表面に薄い高分子の膜を造る。

 

 コーティングによって錠剤やカプセルの表面が保護され、潮解性や耐久性が向上する。

 

 これにより、製品の安定性が改善され、保管中の品質が維持される。

 

 また、医薬品の錠剤には、特有の味や臭いがある場合がある。フィルムコーティングにより、これらの特性をマスキングすることができる。

 

 さらに、コーティングによって表面が滑らかになり、錠剤の摂取を容易にし、嚥下しやすくする。

 

 【印刷とは?】

 

 医薬品には識別するための固有の識別子(識別番号、製造者、医薬品名など)が記載される。患者や医療従事者が正しい薬剤を認識し、混同を避けるために重要である。

 

 錠剤に文字を印刷する方法は、インクジェット方式による可食インクの吹き付けや、レーザーを用いたものなど様々ある。

 

 

医薬品製造

 

 錠剤への印字することで、一目で何の薬か分かるため、飲み間違えを防ぐことができ、患者に喜ばれる。

 

 【検査とは?】

 

 検査は、すべての錠剤やカプセル剤で、複数のカメラを搭載した自動外観検査機で検査する。

 

 ターンテーブルで整列し、ひとつずつをカメラで表面、裏面、側面を検査し、異物や汚れ、欠け、割れなどがあるものを取り除く。

 

 

医薬品製造

 

 検査に合格した錠剤やカプセル剤は包装工程に送られる。

 

 

品質管理と検査

 

 製造された錠剤やカプセルは、品質管理の基準に従って検査される。

 

 物理的、化学的、および微生物学的な試験が行われ、規格に合致していることが確認される。

 

 

医薬品製造

 

包装

 

 品質検査を通過した製品は、適切な容器や包装材料に詰められ、ラベルが貼られる。

 

 これにより、製品が保護され、識別される。

 

 

 【PTP充填包装とは?】

 

 外観検査と品質チェックをクリアすると、PTP充填包装機によって錠剤が包装される。

 

 プラスチックのPTPシートに熱をかけ、錠剤やカプセル剤を入れるポケットを成型する。

 

 成型したシートに異物が混入していないか検査した後、錠剤・カプセル剤を詰め、アルミ箔をかぶせてシールする。

 

 

医薬品製造

 

 異物の混入がないか、すべてのポケットに錠剤・カプセル剤が入っているかを検査し、1シートごとに切り離す。

 

 PTPシートは決められた枚数で積み重ねられ、アルミ剤の袋に梱包、またはプラスチックのバンドで留められる。

 

 重量チェックにより、PTPシートが規定枚数入っていることを確認し、箱詰めする。

 

 最後に段ボールに梱包し、出荷するために製品倉庫に搬送する。

 

 ※PTP…Press Through Package(押して取り出す包装)のこと。

 

 

 医薬品の固形剤製造は、品質管理と検査が特に重要である。

 

 厳格な品質管理が行われ、医薬品の安全性と有効性を確保するための標準化された手順が遵守される。