ここでは、製造工程の管理と注意事項を下記にまとめる。
医薬品の原材料は、適切な条件下で取扱う必要がある。
原料の秤量・計量時には、その原料に悪影響を及ぼさない適切な温度・湿度、微生物管理下で取扱う。
また、異物混入や汚染を防ぐための措置が講じられる。
原材料は正確なラベルが付けられ、識別される。これには正確な成分、ロット番号、製造日などが含まれ、混同を避けるために注意深く管理される。
自社の受け入れ試験を合格した「品質確認済みの原材料」を使用する。
正確な計量機器を使用して原材料が取り出される。計量は慎重に行われ、誤差を最小限に抑えるようにする。
秤量は間違いが許されない重要な作業であるため、二人作業が原則である。
一人が記録し、他の一人が記録の正確さを確認する。
ただし、自動記録計がついた天秤等を使用した場合は、作業者の秤量結果が自動でバックアップされるので、秤量の一人作業は許される。
秤量・計量した原材料の各容器には必ず「表示ラベル」をつける。
各原材料の使用は厳密に記録され、製造記録書やロット記録書に記載される。これにより、製品の追跡性が確保される。
医薬品製造作業で、重要な作業には立会者を設ける。
重要な作業とは、製品品質に重大な影響を与える可能性のある作業のことであり、原料の秤量・計量作業、原材料の仕込み作業、重要工程に関わる作業、製品の取扱い作業などがある。
これらの作業には立会者を設けるとともに、製造記録書には記録確認者欄を設ける。
医薬品製造において「収量(Yield)」は、製造プロセスにおいて特定の段階で得られる製品の量を示すパラメータである。
具体的には、原材料から最終製品までの変換プロセスにおいて、どれだけの量が最終的な製品として得られたかを表す。
収量は工程の正常性を示すパラメータの1つである。
収量管理の流れを次に示す。
<収量管理の流れ>
@期待収量の範囲を設定する
A実収量と期待収量を比較する
B途中収量(特に重要工程の収量)も比較する
C収量計算時の不純物量や水分量の取扱い方法を決めておく
D収量逸脱時には製品品質の調査が必要
※期待収量は、実験データ、パイロットスケール、製造データをもとに設定する
※収率より収量の方が比較に便利
実収量が期待収量の範囲から逸脱したときは、工程が正常でなかった可能性が高い。
工程の正常性調査と製品品質の詳細な調査を行う必要がある。
各工程の作業に時間制限を設ける。この作業時間は、パイロットスケール製造時のデータや商業生産段階の製造実績から決める。
もし、設定した時間に作業が終了しなかった場合は、逸脱処理する。予定通りに作業ができず、何らかの逸脱が発生したと推定できる。
製品品質への影響を調査し、結果を評価する。また、逸脱の発生原因を突き止め、是正措置をする。
工程内試験とサンプリングは品質管理の一環として製造プロセスを監視し、品質を確保するため欠かせない作業である。
製品品質に影響する工程について行うのが一般的であり、サンプリング手順や試験方法の詳細を記載したSOPに従い作業を行う。
試験結果によって工程の状態を把握し、次作業への対応を決定するものであるから、管理基準の設定が重要である。重要工程や最終工程では設定を厳しくしておく。
管理値は、開発段階でのデータや製造実績から決定するものであり、初期の製造時には暫定管理値により行うことが多い。
工程内サンプリングやその試験および試験結果判定は、基本的にQC(品質管理部)が行うことが望ましい。特に、重要工程はQCが行う。
危険が伴うサンプリング、夜勤中の作業、重要度が低い工程内試験などの事情がある場合は、製造部の人が行ってもよい。ただし、サンプリング方法と試験方法はQCの事前承認を得ておく。
このときも試験結果のすべてを残し、QCの内容確認を受ける。
医薬品製造における工程の汚染防止対策は、製造プロセス中において製品の品質や安全性を確保するために非常に重要である。
以下に、工程の汚染防止対策に関連する基本的な手順を示す。
クリーンルームおよび清浄室の整備 | 製造プロセスが行われるエリアは、クリーンルームや清浄室として整備される。これにより、外部からの微粒子や微生物の侵入を最小限に抑える。 |
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衛生基準の遵守 | 従業員は、適切な衛生基準を遵守しながら作業する必要がある。これには、清潔な作業服や手袋の着用、手指の消毒、適切な衛生手順の実施などが含まれる。 |
エアフィルトレーションおよび空調システムの管理 | クリーンルーム内のエアフィルトレーションおよび空調システムは、微粒子や微生物を除去し、制御された環境を維持するために定期的にメンテナンスが必要である。 |
適切な物理的隔離 | 異なる工程や製品の製造エリアは、物理的に隔離する。これにより、異なる製品間でのクロスコンタミネーションを防ぐ。 |
適切な作業手順と訓練 | 従業員は適切な作業手順を守り、製品の取り扱いについて適切に訓練される。これには、製造工程や機器の正しい操作方法、サンプリング手順、汚染のリスクを最小限に抑えるための手順が含まれる。 |
機器および容器のクリーニング | 使用する機器や容器は、適切なクリーニング手順に基づいて定期的にクリーニングされる。これにより、前回の製造プロセスからの残留物が除去され、次回のプロセスに影響を与えないようにする。 |
材料の適正な管理 | 使用する原材料や製品は、適正な方法で管理され、保管される。これには、湿度や温度などの条件を遵守し、材料の賞味期限や使用期限を確認することが含まれる。 |
汚染対策のモニタリングと検査 | クリーンルームや製造エリアにおいて、定期的な汚染対策のモニタリングおよび検査が行われる。これには空気、水からのサンプリングが含まれる。 |
工程内汚染が発生した場合は、次のような原因が考えられる。
<工程内汚染の原因>
@同一製品で前ロットの残留物
A同一製品で前工程の残留物
B異種製品で前製造品の残留物
C同一時間に製造した異種物質の混入
D飛来または持ち込み異物の混入
E設備が発した異物(機械油など)の混入
F人的ミス(洗浄による異物混入、汚染器具の使用、人毛、単純ミス)
汚染防止には、次のような対策を行う。
<汚染防止対策>
@汚染の可能性ごとに対策を立てる
Aやむを得ないものは許容値を設けて管理する(前ロットの残留物など)
B精製後の製品取扱い管理を徹底する
CSOP整備とともに記録を保存し、後日の調査に備える