医薬品の製造設備は、異物の混入や汚染(前回のバッチの成分混入を含む)を防ぎ、清浄に保つ必要がある。
各バッチを製造した後は、製造に用いる機器を十分に洗浄し、必要に応じて消毒や滅菌を行う。
特に、生産機器を分解せずに定置状態で洗浄することをCIP(Cleaning in Place:定置洗浄)、滅菌することをSIP(Sterilization in Place:定置滅菌)という。
CIP(Cleaning in Place:定置洗浄)は、設備や配管内部を洗浄するためのプロセスである。
医薬品製造プロセスで使用される機器や配管は、製品の残留物や微生物の汚染を防ぐために定期的に洗浄する必要がある。
CIPでは、水もしくは洗浄液(酸やアルカリや界面活性剤等)を用いて汚れを落とす。
タンク内はスプレーボールからのシャワー、撹拌翼などの構造物は貯め洗い、配管内は一定以上の流速を保つなどして、洗浄効果を確保する。
一般的にCIPでは循環洗浄ののち、清浄な水でリンス(注射剤では最終リンスはWFI)を行う。また、CIP設備はタンク、ポンプ、および熱交換器(洗浄液を昇温する)によって構成されている。
CIPにより、設備や配管内の残留物や微生物を効果的に除去し、製造プロセスの安全性と品質を確保する。
SIP(Sterilization in Place:定置滅菌)は、設備やタンク、配管などの部品を滅菌するためのプロセスである。
医薬品製造において、製品や原材料を汚染するリスクがある部品は、製造プロセスの前に滅菌される必要がある。
SIPでは、一般的に精製水を原水としたクリーンな飽和水蒸気(ピュアスチーム)を生産機器の系内に通し系内を昇温させ、すべての微生物を死滅させ無菌化する(滅菌)。
これにより、微生物の汚染リスクを最小限に抑え、製品の安全性と品質を確保する。
系内を昇温し一定時間温度保持(例:121℃,20分)をする際、ガス溜り等でスチームが隅々に行き届かない、凝縮水による温度低下が生じるなど不都合があると、滅菌ができない箇所が生じる。機器や配管の形状およびSIP時の制御シーケンスには、十分留意する必要がある。
ピュアスチーム発生器は、高品質な蒸気を生成する装置である。
ピュアスチーム発生器は、純水を用いて高品質な蒸気を生成する。高品質な蒸気は、製品の品質と安全性を確保するために重要である。
この蒸気は、製造プロセス中に医薬品の滅菌や熱処理などに使用される。
ピュアスチーム発生器
SIPで必要となるピュアスチーム発生器は、一般的に第一種圧力容器に分類され、年1回の性能検査が必要となる。
製造プロセス中に使用される蒸気の品質と安全性を確保するために、定期的な点検や保守が行われる。
圧力容器とは、内部に大気圧を超える気体または液体を保有し、内容物の加熱、反応などの工程を行ったり、高温、高圧の液体を蓄積したりする容器のことをいう。
圧力容器は、第一種圧力容器(液体)と第二種圧力容器(気体)に分けられ、容量や使用圧力が小さいものは小型圧力容器または簡易容器となる。
第一種圧力容器は、製造許可をはじめ、製造又は輸入、設置などの各段階での都道府県労働局などによる検査が義務付けられ、また、使用開始後は年に1回登録性能検査機関による性能検査が義務付けられている。
また、第一種圧力容器の取り扱いに関してはそれぞれの種類の大きさによって一定の資格を有する「作業主任者」を選任する必要がある。
詳しくは、日本ボイラ協会ホームページで確認できる。