SOPとは「Standard Operating Procedures」の略称であり、日本語では標準作業手順書と訳される。
特定の作業や製造プロセスを標準化し、すべての従業員が安全かつ一貫した方法で業務を遂行できるように定めた公式な文書である。

これは、あらかじめ確立された製品仕様と同等の品質を持つ医薬品を恒常的に製造することを目的に、作業が常に同一の条件・手順で実施されることを保証するため、詳細に文書化され、正式に承認された手順を指す。
SOPの具体的な記載形式や内容は各企業の裁量に委ねられているが、現場の実際の作業工程を誰が読んでも誤解なく実行できるよう、極めて具体的に記述されたマニュアルと言える。
SOPには、その文書が何を達成するためのものであるか(目的)、およびどの範囲の作業に適用されるか(適用範囲)を明確に定義する必要がある。
目的には、標準化された手順の遵守による「製品品質の維持」「作業効率の向上」「安全性の確保」などが含まれる。

実用性の高いSOPを作成するにあたり、以下の要件を満たすことが求められる。
<SOPに求められる6つの要件>
・誰が読んでもわかりやすく、明確な表現であること
・作業に必要な情報がすべて網羅されていること
・作業単位ごとに個別のSOPが存在すること
・製造に関わるすべての作業に対してSOPが整備されていること
・作業者が現場ですぐに閲覧・確認できる状態であること
・常に最新の状態にアップデート(改訂)されていること
SOPの核心は、具体的な作業プロセスに関する手順の詳細な記述である。
作成に際しては、標準化する予定の製造工程や品質管理工程において、一定範囲内の条件および手順で作業を繰り返し実施するなどして、その製造条件・手順の堅牢性(ロバスト性:多少の変動要因があっても品質に影響を及ぼさない性質)が事前に確認されている必要がある。
SOPは医薬品製造における品質管理および品質保証の基盤として位置づけられ、一定の品質を担保し、公的な査察や内部監査に備えるための重要な証拠書類となる。

作業員は必ずSOPに準拠して作業を実施し、定められた品質基準を継続的に満たすことが厳しく求められる。
医薬品製造におけるすべての行為はSOPを根拠として行われるため、日常業務から例外的な対応に至るまで、あらゆる作業にSOPが必要である。
最も留意すべき点は、SOPの内容を現場の判断で勝手に変更してはならないという原則である。
業務改善等を目的として作業手順を変更したい場合であっても、その変更が製品品質に悪影響を及ぼさないことを科学的に検証し、変更管理の手続きに則って工程責任者や品質保証部門等の正式な承認を得た上で、SOPを改訂しなければならない。
すなわち、いかに良かれと思った改善案であっても、個人の判断で作業手順を逸脱してはならない。
さらに「SOPが存在しない作業は実行してはならない」のが鉄則である。これは、トラブルシューティングや機器の非定常的なメンテナンスなど、通常時には発生しないイレギュラーな作業に対しても、あらかじめ対応手順を定めたSOPが必要であることを意味する。
SOPは製造プロセス、設備の操作・洗浄、品質管理試験、安全衛生対策、法令遵守など、多岐にわたる分野を網羅し、医薬品製造における品質と安全性を確保するための憲法とも呼べる絶対的な規範である。
【ポイント】
属人化の排除と後進育成のツールとしての活用
優れたSOPは、熟練者のノウハウを形式知化したものであり、業務の属人化を防ぐ最大の防御策である。チーム内の次世代の担当者へ業務を引き継ぐ際、SOPが現場の「実態」と完全に一致していれば、教育期間の大幅な短縮と作業精度の均一化が可能となる。形骸化を防ぐため、作業者からのフィードバックを定期的に吸い上げ、適切な変更管理手続きを経て継続的にSOPをブラッシュアップする文化の醸成が不可欠である。
| SOP(標準作業手順書) | Standard Operating Proceduresの略称。 作業の均質性と品質を確保するため、具体的な作業手順や留意事項を詳細に定めた公式マニュアル。 |
|---|---|
| 恒常的(製造) | 常に一定の状態を保ち、ブレがないこと。 医薬品製造において、決められた規格通りの製品を安定して作り続けられる状態を指す。 |
| 堅牢性(ロバスト性) | 製造工程において、条件にわずかな変動(パラメータのブレや作業環境の変化など)が生じても、結果や製品品質に悪影響を及ぼさない性質のこと。 |
| 査察 / 内部監査 | 製造所が法令や手順に則り、適切に運用されているかを客観的に評価・検証するプロセス。 |
| 変更管理 | 作業手順や設備等を変更する際、事前に製品品質への影響を科学的に検証し、権限を持つ責任者の承認を得てから実施する厳密な管理プロセス。 |
| 逸脱 | 定められたSOPや製造指図書から外れた操作を行うこと。 個人の判断による意図的な逸脱は、重大な品質リスクとなるため厳格に禁止されている。 |
| 属人化 | 特定の業務の手順やノウハウが特定の担当者に依存しており、他の従業員には実行できない状態。詳細なSOPの整備によって排除されるべきリスク。 |