製薬用水の品質モニタリング

製薬用水の品質モニタリング

 

 製薬用水の品質モニタリングは、日本薬局方のガイドラインに示され、次のような検査項目がある。

 

 

 

 ・導電率

 

 ・TOC(全有機炭素)

 

 ・化学物質管理

 

 ・生菌数

 

 ・エンドトキシン

 

 ・微粒子数

 

 

導電率モニタリング

 

 医薬品を製造する際、原材料としての水にも不純物の少ない純水が用いられる。その純度の管理に、導電率が用いられる。

 

 導電率は水中に含まれる溶質(主にイオン)の存在によって変化する。高純度の水はイオンが極めて少ないため、導電率が非常に低いことが期待される。

 

 2011年、第十六改正 日本薬局方(JP16)において、製薬用水(精製水、滅菌精製水、注射用水)の医薬品各条試験の純度評価に導電率を用いることが規定された。

 

 導電率とは、ある液体において電流を流せる能力を測定することである。

 

 

医薬品製造 導電率

 

 導電率はpHと並び、水溶液の性質を知るための重要な指標である。

 

 液体、特に水には種々の物質を溶かす性質があるが、多くの場合、物質が溶け込むと電気が流れやすくなる。導電率とは、液体中にどれくらいの物質が溶け込んでいるか(イオン化しているか)を示す指標と言える。

 

 例えば、塩分がたくさん溶解している海水では、導電率は非常に高くなる。

 

 

医薬品製造原材料

 

 純度の指標として導電率が用いられ、その値が一定値以下であることが常時モニタリングされている。

 

 製薬用水や製造プロセスで使用される水は、できるだけ高い純度を維持する必要がある。

 

 プロセス中において水の純度が低下することがないよう、導電率の変動をモニタリングし、異常が検出された場合は適切な対応を行う。

 

TOCモニタリング(全有機体炭素)

 

 TOCモニタリングは高純度水(製薬用水など)の純度を評価するために使用される。水の純度が高いほどTOC濃度も低くなる。

 

 

医薬品製造

 

 全有機体炭素(Total Organic Carbon:TOC)とは、水中の有機物の量を炭素量を基に測定する方法で、有機物による汚染のモニタリングに使用される。

 

 TOCは、精製水(純水)の純度管理として広く使用されている。

 

 “有機物”は砂糖やスクロース、アルコール、石油、PVC接着剤、樹脂など多岐にわたり、有機性の汚染物質はその由来も様々である。

 

 「精製水」及び「注射用水」のTOCの規格限度値はいずれも「0.50 mg/L以下」(500 ppb以下)とされているが、製薬用水の各製造施設は、製薬用水システムの運転管理にあたり、別途警報基準値と処置基準値を定めてTOCモニタリングを行うことが望ましい。

 

 推奨されるTOCの処置基準値は、下記のとおりである。

 

 ●処置基準値:≦300 ppb (インライン), ≦400 ppb (オフライン)

 

 TOCの変動があれば、水の製造プロセスに問題が生じている可能性がある。

 

生菌数モニタリング

 

 生菌数モニタリングの主な目的は、製薬用水が微生物によって汚染されていないことを確認し、製造プロセスや製品の品質を確保することである。

 

 製薬用水の品質を微生物学的に管理することは、重要課題の一つである。

 

 水を媒介する微生物は広く存在しており、異なる環境下で生存または成長するための能力は変化に富んでいる。

 

 生菌数モニタリングのためには、製薬用水から適切なサンプルを採取する必要がある。サンプリングは定期的に行われ、異常が検出された場合には追加の調査が行われる。

 

 

医薬品製造 導電率

 

 生菌数モニタリングの試験方法には、培地カウント法や膜フィルタ法などが一般的に使用される。これらの方法は、微生物が成長する培地にサンプルを培養して菌数を数えることで、微生物の数を定量的に評価する。

 

 管理されていない水装置は患者に害を与え、医薬品の品質を落とす可能性がある。

 

 微生物の中には水処理設備の器材、貯水タンクあるいは配水システムの中で増殖するものも存在する。

 

 よって、製薬用水システムを適切にデザインし、定期的な消毒を実施し、増殖防止のための適切な措置を講ずることにより微生物汚染を最小限に抑えることが非常に重要となる。

 

エンドトキシンモニタリング

 

 エンドトキシンモニタリングの主な目的は、製薬用水や製品がエンドトキシンに汚染されていないことを確認し、製造プロセスや製品の品質を保つことである。

 

 

医薬品製造

 

 エンドトキシン(endotoxin)とは、グラム陰性桿菌の細胞壁に存在する耐熱性のリポ多糖で、内毒素と呼ばれる。

 

 エンドトキシンの代表的なものにパイロジェンがあり、パイロジェン汚染は細菌によるものが多いことから、パイロジェンをエンドトキシンと同じ意味合いで使われることもある。

 

 エンドトキシンの検出には、主にLAL法(Limulus Amebocyte Lysate法)が使用される。LALは、リムルスカブ(ヒトデの一種)の血液中の特定の細胞成分から抽出された酵素の一部であり、エンドトキシンに反応して凝集する特性を利用して検出する。

 

 医薬品の品質管理にとってエンドトキシンは大きな問題である。

 

 医薬品分野ではエンドトキシンは発熱性物質として捉えられており、極めて微量の混入によって発熱を引き起こすことから、生体内に直接導入される注射剤等において厳重な管理が求められている。

 

 エンドトキシンは強力な毒素であり、環境中に広く常在している細菌に由来するために簡単に汚染が起こる。

 

 しかも非常に安定な物質であるため、一旦汚染が起こると、たとえ菌を死滅させてもエンドトキシンそのものは残存し、除去もしくは失活させることが困難であり、しかも極めて微量で活性を示す。

 

 医薬品の品質管理には、エンドトキシン量を正確に測定することが不可欠である。

 

 

PMDAによる「製薬用水の品質管理」の説明はこちら