従来の医薬品は、主に化学合成によって生産される低分子化合物である。
それに対しバイオ医薬品は、細胞培養や遺伝子組換え技術などのバイオテクノロジーを応用して生産される。
バイオ医薬品の主な製造工程は、次のように4つのステップからなる。
遺伝子組み換え技術を用いて、目的のタンパク質の情報が書かれた遺伝子を大腸菌・酵母・動物細胞に導入し、細胞株を樹立する。
人やその他の生物を構成する細胞は、タンパク質をつくる力を持っている。
作りたいタンパク質の情報が書かれた「遺伝子」を細胞に導入し、細胞の力を利用して人工的にタンパク質を作って医薬品にしたものがバイオ医薬品である。
「培養工程」では、バイオ医薬品生産細胞を培養することで、薬のもととなるタンパク質を生産する。しかし、培養工程が終わった時点では、目的のタンパク質以外の様々なものが混じっている。
また、バイオ医薬品を大量生産するには数百〜1万リットル規模の大型培養タンクを用いるなど、一般的な医薬品に比べると大規模な設備が必要となる。
「精製工程」において、目的のタンパク質のみを取り出す作業を行う。
このプロセスには、ろ過、クロマトグラフィー、沈降、濃縮、凍結乾燥などが含まれる。
バイオ医薬品の調製にあたって、基本的な注意事項は低分子医薬品と同じである。
バイオ医薬品の中にも、凍結乾燥品などの調製が必要な注射剤がある。激しい振盪や撹拌をしない、他剤と混注しない、といった注意点に加え、指定された希釈液を用いて適切な濃度になるように調製することが重要である。
これらの工程を経て得られた、純度の高いタンパク質は「原薬」と呼ばれ、製剤化工程(充てん作業など)を経て医薬品になる。
培養工程〜製品が出来上がるまで、製品にもよるが、およそ3か月ほどの時間を必要とする。
分子が大きく構造が複雑なバイオ医薬品は、製造工程のわずかな変化によって品質が変わってしまうことがある。
よって、臨床試験で確認された有効性・安全性が確保されるように、厳密な品質管理が行われている。
また、大規模な設備と高価な原材料等を必要とするため、製造原価が高くなり、結果的に薬剤費用が高額となるものがある。
バイオ後続品(バイオシミラー)とは、国内ですでに新医薬品として承認されているバイオ医薬品(先行バイオ医薬品)と同等/同質の品質、安全性、有効性を示す医薬品として、先行バイオ医薬品と異なる会社で開発されるバイオ医薬品のことである。
同等/同質とは品質が類似していて、安全性・有効性に影響するような違いはないこと。
同等性/同質性を示すため、ジェネリック医薬品とは違って、バイオシミラーの開発を行うには効果や副作用などを評価する臨床試験を行うことが求められる。
バイオシミラーは、先行バイオ医薬品より薬価が安くなることから、医療財政の負担軽減が期待される。
バイオ医薬品をはじめとするタンパク質製剤では温度、光が品質に影響を与える可能性がある。
そのため、多くのバイオ医薬品の保存条件は「凍結を避け冷所保存」、「2〜8℃」、「遮光」などとなっている。
品質の変化は有効性、安全性に影響する可能性があるため、保管条件を逸脱しないよう細心の注意が必要である。