医薬品製造の基礎知識

製薬用水の種類と用途

医薬品製造における水の必要性

 

 医薬品の原材料には有効成分や添加剤などがあるが、この他に医薬品に含まれるものが「水」である。

 

 医薬品製造に使用される水は「製薬用水」と呼ばれる。

 

 

医薬品製造

 

 製薬用水の用途は、実に広い。原材料を溶解するための水、造粒時に添加する水などは、最終的に製品に含まれることになる。

 

 また、製品に接触する製造設備や容器類の洗浄・滅菌でも大量の水や蒸気を使用する。

 

 特に注射剤の中身のほとんどは注射用水と呼ばれる製薬用水である。

 

 もし製薬用水の品質が悪ければ、水そのものもしくは残留した成分が、人体に入り込む可能性がある。

 

製造支援設備

 

 このため製薬用水はGMPの対象として一般の水とは区別して管理されている。

 

 製造工程で使う主要機械を生産設備と呼ぶことに対し、製造に必要なユーティリティ(用役)や空調設備のことを製造支援設備と呼ぶ。 

 

 製造支援設備はGMP対象なので、製薬用水もGMP対象として管理しなければならない。

 

製薬用水の種類

 

 製薬用水に含まれる不純物は、医薬品を介して人体に取り込まれる可能性がある。

 

 また、品質試験では試験結果に影響を及ぼす可能性もある。

 

 このため、製薬用水からは人や試験に影響がないレベルまで不純物を取り除く必要があり、日本薬局方に水質の基準が示されている。

 

 日本薬局方には製薬用水の規格として、常水、精製水、精製水(容器入り)、滅菌精製水(容器入り)、注射用水、注射用水(容器入り)が示されている。

 

【製薬用水の種類】

常水 水道法第4条に基づく水質基準に適合した水。

井水、工業用水等から製造する場合は、アンモニウムの試験(0.05mg/L以下)に適合すること。

精製水 「常水」を超ろ過(逆浸透、限外ろ過)、イオン交換、蒸留又はそれらの組み合わせにより精製した水。
精製水(容器入り) 「精製水」を気密容器にいれたもの。
滅菌精製水(容器入り) 「精製水」を気密容器にいれ、滅菌して製したもの、又はあらかじめ滅菌した「精製水」を無菌的な手法により無菌の容器に入れた後、密封して製したものである。
注射用水 「常水」にイオン交換、逆浸透等による適切な前処理を行った水又は「精製水」の、蒸留又は超ろ過により製したものである。
注射用水(容器入り) 「注射用水」を密閉容器にいれ、滅菌して製したもの、又はあらかじめ滅菌した「注射用水」を無菌的な手法により無菌の容器に入れた後、密封して製したものである。

 

 「容器入り」の水に対し、製薬用水設備で製造されて貯蔵された(容器に詰められていない)状態の水を「バルク」という。

 

 一般的に医薬品の製造ライン(仕込み用、洗浄用等)で使用されるのはバルク水である。

 

不純物の指標

 

 水に含まれる不純物の指標となるのが、導電率と全有機体炭素(Total Organic Carbon:TOC)である。

 

 導電率には水中の無機塩類の量が、TOC値は有機不純物の量がそれぞれ反映される。そこで、「精製水」と「注射用水」の規格には、TOCと導電率の基準値が示されている。

 

【製薬用水の規格】

精製水 純度試験:有機体炭素0.50mg/L以下
導電率:2.1μS/cm(25℃)
注射用水 純度試験:有機体炭素0.50mg/L以下
導電率:2.1μS/cm(25℃)
エンドトキシン:0.25EU/mL未満

 

 水中の微生物の増加は水質劣化につながる。

 

 そこで、製薬用水の製造及び貯蔵においては、水中の生菌数とエンドトキシンの濃度を基準値以下に抑えるような管理が求められる。

 

規格に応じた用途

 

 製薬用水の規格は、各水の用途を考慮して規定されている。一般的に、最終製品に近い工程で使用される製薬用水ほど、不純物が少なく厳しい管理が要求される。

 

【製薬用水の用途】

製薬用水区分 使用例 適用区分
常水 「精製水」や「注射用水」の原水として用いられる他にも、原薬を製造する際、中間体の仕込みや洗浄に使用される場合もある。 原薬中間体
精製水 原薬の最終精製工程や非無菌製剤(固形製剤など)の製造において、仕込み水や洗浄水として使用されている。点眼剤では微生物を管理した精製水、液剤・軟膏剤などは微生物学的に適切な管理を行 った精製水が使用される。 一般原薬、点眼剤、液剤、軟膏剤 等
注射用水 注射剤の仕込み水として用いられるだけではなく、「精製水」で洗浄した製造装置や器具類、注射剤に接する容器の表面をすすぐ(リンス)ためにも使用される。 注射剤、無菌原薬、眼軟膏剤  等

 

 注射用水は微生物に加え、発熱物質であるエンドトキシンもより管理される。微生物は注射剤の製造工程にある最終滅菌(オートクレーブ)やろ過滅菌によって除去できるが、エンドトキシンは除去できない。

 

 280℃以上で滅菌する乾熱滅菌では熱分解するが、オートクレーブを用いた蒸気滅菌では分解されず、ろ過滅菌のフィルターも通過してしまう。

 

 そこで、エンドトキシンは注射剤の製造工程中に持ち込まないようにする必要がある。

 

 

 

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