製造指図書と製造記録書

製造指図書と製造記録書は別の用紙にするのが原則である。両者の意味するもの、管理者、承認者が異なるからである。 

 

製造指図書原本と製造指図書

 

 製造指図書原本は標準手順となり、製造指図書はそれを実際の製造プロセスに適用し、製品に関する正確な情報を提供する。

 

製造指図書原本
(Master Production Instruction, Master Batch Record)
役割: 製造プロセス全体を管理し、詳細な手順や指示を提供する文書。これは製造プロセスのマスターバッチレコードであり、製品ごとに必要である。
内容: 製造の開始から終了までの全体の工程や手順が含まれる。原薬や材料の投入、混合、反応、分離、精製、充填、包装などの各ステップに関する具体的な操作手順が示される。
詳細性: 非常に詳細で、バッチごとに厳密な操作手順、製品仕様、品質基準などが定義される。
製造指図書
(Batch Production Record, Batch Record)
役割: 製造指図書原本から生成され、実際の製造プロセスの実施時に使用される文書。特定の製造バッチに関連するもので、実際の生産データや記録を収めたものである。
内容: 製造指図書原本に基づいて作成され、製造プロセスの実績データ、操作者のサイン、測定結果、特記事項などが含まれる。
詳細性: 製造指図書原本の手順に従いつつ、実際の製造プロセスにおいて記録されたデータや変更事項が反映される。必要に応じて、バッチごとの証跡として機能する。

 

 製造指図書原本は、ロット間の同一性を保証するために作成する。ロットサイズが異なれば、別の原本を使用する。

 

 

製造指図書

 

 次に、製造指図書原本の概要を示す。

 

 

 <製造指図書原本の意味>

 

 @製造を指図する文書の原本

 

 A指図書は、製造開始まで最も責任ある文書

 

 B各製品の各ロットサイズごとにあらかじめ作成する(製造量や原材料量をすべて記入してある)

 

 C原本の承認、管理をする

 

 D指図書発行時は、原本に発行者、承認者がサインするのみ

 

 <記載事項>

 

 ・製造する中間体、原薬の名称

 

 ・文書番号(定められている場合)

 

 ・原材料、中間体のリスト(名称、コード番号を含む)

 

 ・原材料等の正確な使用量

 

 ・製造場所、主要製造設備

 

 ・作業手順

 

 ・プロセスパラメータとその幅

 

 ・工程サンプリングおよび判定基準(必要な場合)

 

 ・作業終了時間(必要な場合)

 

 ・中間および最終の期待収量とその幅

 

 ・特別な注意事項、参考事項

 

 ・表示材料、包装材料、保管条件

 

 ・製品試験期間中(仮保管中)の保管条件

 

 <原本の照査と承認>

 

 @1名が内容を確認して日付、署名する

 

 AQA(品質保証部)が文書の正当性を確認して、日付、署名する

 

 

 製造指図書は、製造開始までの最も責任ある文書であるから、記載事項は多岐にわたる。そして、その製造指図書原本は、責任体制が重要となる。

 

 原本を作成したときは、作成者か作成部署の責任者が内容を確認し署名する。さらに、品質保証部(QA)が内容を照査し、その正当性を確認して承認する。

 

 また、旧版を誤使用したり、勝手に原本が改訂されたり、記入されたりすることがないように厳重に管理する。

 

製造記録書原本と製造記録書

 

 「製造記録書原本」と「製造記録書」は、製造プロセスにおける実績データや記録を文書化し、品質の確認や規制要件への遵守を保証するための文書である。

 

製造記録書原本
(Master Manufacturing Record, Master Production Record)
役割: 製造プロセス全体を管理し、製造記録書を生成するためのマスターな文書。通常、製造指図書原本とも呼ばれます。製造記録書原本は特定の製品や製造プロセスに関連するもので、製品ごとに必要である。
内容: 製造プロセスの詳細な手順や指示、製品仕様、品質基準、許容範囲などが含まれる。製造の開始から終了までの全体の工程や各ステップに関する具体的な操作手順が示される。
詳細性: 非常に詳細で、製造プロセスに関する全体の指針となる。規制要件に従い、製造における品質管理や手順の一貫性を確保するために使用される。
製造記録書
(Batch Manufacturing Record, Batch Production Record)
役割: 製造記録書原本から生成され、実際の製造プロセスの実績データや記録を収めた文書。特定の製造バッチに関連するもので、実際の生産データを保管するために使用される。
内容: 製造記録書原本に基づいて作成され、製造プロセスの実施時に記録されたデータや操作者のサイン、測定結果、特記事項、使用された原材料や設備などが含まれる。
詳細性: 製造記録書原本の手順に従いつつ、実際の製造プロセスにおいて記録されたデータや変更事項が反映される。これにより、バッチごとの製造プロセスの実績が文書として残る。

 

 製造記録書原本は、製造指図書同様に、ロットサイズごとに作成しておく。

 

 

製造指図書

 

 記録書発行時は、記録書原本をコピーして、記録書発行者が記録書番号を付け、日付を記載し、署名する。

 

 製造記録書には、そのロットの製造および管理に関する全情報を記載する。

 

 日付や作業時間の記入から始めて、製造設備、各種測定値、製造担当者や立会者、収量、包装、逸脱などの出来事に至るまであらゆる情報を記録する。

 

 

 <発行>

 

 ・ロットサイズごとに製造記録書原本を作成しておく

 

 ・原本をコピーして製造記録書を発行する

 

 ・記録書発行者が、記録書番号を付け、日付、署名する

 

 <記録項目>

 

 ・記録書番号(文書番号)、発行日付

 

 ・日付、時間(必要な場合)

 

 ・使用製造設備(反応缶、乾燥機、粉砕機等)

 

 ・製品ロット番号

 

 ・使用原材料等のロット番号、重量/容量

 

 ・工程パラメータ

 

 ・重要工程の作業者、立会者

 

 ・工程内サンプリング者

 

 ・工程内試験の種類とその結果

 

 ・中間体実収量、製品実収量

 

 ・包装およびラベル

 

 ・逸脱、その評価、調査結果またはその文書番号

 

 ・合否判定の試験結果

 

 

 製造記録書原本は、製造部門が製造指図書をもとに作成する。

 

 旧版を誤使用したり、原本が改訂されたり、勝手な記入がされたりすることがないように厳重に管理する。

 

製造文書の流れ

 

 

製造指図書

 

 製造は、製造指図書の発行で始まる。製造指図書原本をコピーして、責任者が署名する。

 

 次に指図書に従い、製造記録書を発行する。指図書と同じように製造記録書原本をコピーして、責任者が署名する。

 

 承認が得られたら、製造プロセスが開始される。製造の進捗に従って、実際のデータ(測定結果、操作者のサイン、使用された原材料など)が製造記録書に記録される。

 

 逸脱やOOS(Out of Specification:試験結果の逸脱)が発生すれば、それらの報告書、調査記録および結論を記載した書類を添付して記入済製造記録書とする。

 

 製造記録書は製造責任者が内容を照査する。

 

 製造記録書に試験管理記録書、包装記録書、ラベル記録書等、当該ロットに関係する製造および試験の記録すべてを加えて「ロット記録書」とする。

 

 ロット記録書はQAが照査し、承認して当該ロットの製造を終了する。このQAによるロット記録書の照査・承認が製品の出荷判定の主要部となる。

 

 ロット記録書は、QAが保管するのが一般的である。