医薬品製造に関わる基礎知識をまとめて紹介します。薬機法改正についてまとめました。
薬機法では毒薬・劇薬の定義が次のように規定されている。
・毒薬とは、毒性が強いものとして厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定する医薬品をいう(薬機法第44条第1項)
・劇薬とは、劇性が強いものとして厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定する医薬品をいう(薬機法第44条第2項)
・毒薬及び劇薬は、単に毒性、劇性が強いものだけでなく、薬効が期待される摂取量(薬用量)と中毒のおそれがある摂取量(中毒量)が接近しており安全域が狭いため、その取扱いに注意を要するもの等が指定され、販売は元より、貯蔵及びその取り扱いは、他の医薬品と区別されている
・毒薬又は劇薬は、要指導医薬品に該当することはあるが、現在のところ、毒薬又は劇薬で、一般用医薬品のものはない
項目 | 毒薬 | 劇薬 | 一般用医薬品 |
---|---|---|---|
定義 | ・毒性が強いものとして厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定する医薬品 ・非常に毒性が強く、微量でも人体に害を及ぼす可能性がある医薬品。 |
・劇性が強いものとして厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定する医薬品 ・比較的毒性が強く、注意が必要な医薬品。 |
一般消費者が使用できる、安全性の高い医薬品。 |
表示 | 容器や包装に黒地に白枠の「毒」と記載。 |
容器や包装に白地に赤枠の「劇」と記載。 |
「第1類」「第2類」「第3類」などに分類。 |
購入・取扱 | ・医師、歯科医師、薬剤師などの専門家のみが取り扱い可能。 ・他の物と区別して貯蔵、陳列しなければならない。 ・貯蔵、陳列する場所にかぎを施さなければならない。 |
・医師や薬剤師の監督下で使用されることが推奨。 ・他の物と区別して貯蔵、陳列しなければならない。 ・かぎについては規定なし。 |
一般消費者が薬局やドラッグストアで購入可能。 |
安全域 | 非常に狭く、投与量のわずかな過剰で毒性が出る可能性が高い。 | 比較的狭いが、毒薬よりは広い。 | 広く、過剰投与による危険性は比較的低い。 |
使用目的 | 専門的治療が必要な疾患の治療に使用。 | 治療や予防で注意を要する場合に使用。 | 日常的な治療や予防に使用。 |
法的規制 | 厳しい規制があり、登録および記録の管理が必須。 | 規制はあるが、毒薬よりは緩やか。 | 一般的な医薬品規制が適用される。 |
例 | ジギタリス(心不全治療)、シアン化カリウム(毒性が強く化学実験で使用) | モルヒネ(鎮痛剤)、アドレナリン(救急時の使用) | アセトアミノフェン(解熱鎮痛薬)、胃腸薬、感冒薬 |
使用例 | ・心不全患者への厳密な投薬 ・化学実験で毒性研究に使用 |
・がん患者への痛み緩和 ・救急蘇生で心拍促進 |
・頭痛時の鎮痛剤として使用 ・胃もたれ時の胃薬 |
この表から分かる通り、「毒薬」「劇薬」はその毒性や作用の強さに応じて取り扱いに厳しい制限が課されている。