逸脱(いつだつ)とは…定められた作業手順、管理基準あるいは試験規格等から乖離(かいり)している状況なり状態のこと
2005年に施行された改正GMPにより、逸脱管理が医薬品の製造に必須要件となった。
逸脱は、製造過程で起こる異常や不具合、設定された規格から外れることを指し、製品の品質、安全性、有効性に影響を及ぼす可能性があるため、厳格な管理と対応が必要である。
逸脱の発生原因を、次の5つに分類した。
1、人の注意・知識・能力不足
例)心配ごとを考えていて、注意力散漫になり、ボタンを押し間違えた。
例)知識や教育不足でバルブを開ける順番を間違えた。
2、システム的な欠陥
例)保全不十分でポンプのシールが壊れて反応液漏れを起こした。
3、法規則や標準への対応不足
例)以前に購入した試薬が、麻薬に指定されているのに気づかず法違反を問われた。
例)外国製造所の責任者が交代していたを知らず、変更届出の期間を大きく超えてしまった。
4、想定外の事態
例)停電で製品保管冷蔵庫の電源が自動復帰せず、庫内温度が管理範囲を長時間超えたため製品を廃棄した。
例)無菌医薬品の製造にかかわる作業者が海外出張した際にウイルスに感染し、製造工程で作業したのちに発症したため該当品を出荷停止とした。
5、新たな概念による規制
例)労働法、会社法あるいは環境保護法などに新たな概念による規制が生まれ、その規制に対応していなかった。
GMP省令第15条では、逸脱の管理として、次のように述べられている。
【GMP省令 第十五条】
第十五条 製造業者等は、製造手順等からの逸脱(以下単に「逸脱」という。)が生じた場合においては、あらかじめ指定した者に、手順書等に基づき、次に掲げる業務を行わせなければならない。
一 逸脱の内容を記録すること。
二 重大な逸脱が生じた場合においては、次に掲げる業務を行うこと。
イ 逸脱による製品の品質への影響を評価し、所要の措置を採ること。
ロ イに規定する評価の結果及び措置について記録を作成し、保管するとともに、品質部門に対して文書により報告すること。
ハ ロの規定により報告された評価の結果及び措置について、品質部門の確認を受けること。
2 製造業者等は、品質部門に、手順書等に基づき、前項第二号ハにより確認した記録を作成させ、保管させるとともに、同号ロの記録とともに、製造管理者に対して文書により適切に報告させなければならない。
逸脱を管理するということは、生じた逸脱の内容を記録し品質への影響を評価し、さらに必要な措置をとることだけではない。
逸脱を管理することは、同じ逸脱を再発させないこと、また類似の逸脱について、その発生を未然に防止することである。
つまり、逸脱を減少させなければ逸脱を管理していることにはならない。