逸脱が発生すれば、応急処置を実施する以外に、製品への影響を調査して出荷の可否や回収の必要性有無を判断する。
また、直接原因や根本原因を特定し、それらに対して的確で妥当性のある是正処置/予防措置(CAPA)を行う。
逸脱管理において原因調査は重要であり、組織としてこの調査を迅速に行う。
方法、職員、機械、原材料、環境などのいろいろな要因を多面的に分析する。
また、原因調査では、直接的な原因だけでなくその背後にある要因も含めて広く調査することが必要である。
逸脱の原因が明確になれば、製品の措置の方針を決めることができる。
逸脱を発生させた原因が当該ロット、ほかのロットあるいは他製品へどの程度影響したのか的確に把握し、品質(使用者の健康への影響リスク評価を含む)および承認内容と整合性の両面から、最終的にそれらのロットの取り扱いを決定しなければならない。
また、必要に応じ製造販売業者の了解を得ておく。
逸脱が生じたからといって常に当該ロットを廃棄することにはならない。出荷することもあり得る。
次に、逸脱ロットを出荷する際の留意点を示す。
@逸脱報告書が提出されていること
A製造記録に逸脱内容、処置の記載があることを確認する
BCAPAが比較的短期間で対応できる場合、その実施記録文書の作成を製造記録へ添付する
C必要に応じて製造販売業者の承認を得る
尚、原因の調査をしても、逸脱の真の原因が結果として判明しないこともある。
この場合には、最も可能性のある原因についてそれを取り除くのがよい。措置を講じたあとに、再発するかどうかを日常的に監視していく。また、年次照査でも再発状況を見る。
措置は、むやみに改善策をたくさんやりすぎない。的を射ていない改善策は、逆に過重な負担を強いることになり、新たな逸脱を招く元ともなるから気を付けたい。
CAPAの活動は立案することから始まる。
CAPAの立案の考え方やアプローチは各社各様であるが、根本原因に対するCAPAでなければ意味がない。
次に、適切なCAPA活動によるメリットを示す。
・再発防止あるいは、再発を著しく低下できる
・品質や生産性が低下するリスクを低減できる
・ノウハウの蓄積、構築あるいは技術力の向上が期待できる
・GMPや品質レベルを向上させ、それらをより強固なものにできる
尚、根本原因の調査・特定やCAPAの立案と実施に対しては、品質部門による妥当性の評価と承認が必要である。
CAPAの立案後に5W1Hを明確にしたCAPA実施計画書を作成し、その進捗を監視していく。
CAPAを常に管理された状態にしておくのは品質部門の重要な仕事である。
管理せずにおくと、あらかじめ設定したCAPA完了期限を超過させたり、最悪の場合にはCAPAそのものが片隅に追いやられたりする事態が生じる。
妥当性のあるCAPAを適切に行うため、実施担当部門と品質部門は、CAPA実施計画書に沿ってCAPAを完了できるように連携や協力をする。
CAPAの実施後、同じ逸脱が再発していないか、あるいは実施したCAPAによって別の逸脱が生じていないかなどの情報をとりまとめ実施したCAPAの妥当性を評価する。
同じ逸脱が再発した場合にはCAPAの見直し・再検討を行い、もう一度はじめからCAPA活動のサイクルを回す。
逸脱の発生がなくなった場合は、より長期のインターバルでのモニタリングに切り替えて、それでも逸脱の発生がなければ、その件での活動は完了となる。
また、製品部門を担当する者は、開発時の失敗事例や過去の製造部門における逸脱事例を把握することによって製品の特性や製造方法をより深く理解し、類似の逸脱に対しても迅速かつ適切に対処できるようになる。
逸脱管理やCAPAを前向きにとらえられるかどうかは、開発力や製造現場の対応力にも影響してくる。
逸脱は改善・改良のよい機会であると認識し、品質向上につなげたい。