信用できる記録とは!?
バリデーションに関する手順書や要領書、および記録書はGMP文書の一部である。このため、適切な文書を作成し、
信頼性の高い記録を残すことが非常に重要である。
信用できる記録を残すには、次の点が求められる。
@記録方法やフォーマットを標準化し承認された正式なものであること
A必要な情報が網羅されていること
B虚偽ではなく事実を記載していること
C間違いなく情報を正確に即座に記録すること
D誰が何を行ったかを明確に記録し追跡調査ができること
E記録を保護するためのセキュリティ措置を講じ不正アクセスや改ざんを防止すること
F記録の定期的な確認や監査を行い不正確な情報や問題があれば修正すること
記録作成に際しては、SOPに示された通りの手順で、情報を漏らすことなく、事実を正確に書きとめる。
さらに、記録を担当したのは誰で、その内容に間違いがないことをチェック承認したのは誰なのか、はっきりわかるような署名、さらに、その記録の証拠となるチャートシートなどの
生データを付属することも重要である。
また、記録の文字は読みやすく(可読であり)、手書きの場合は、消すことができない筆記用具を使用して、改ざんを防止する。
個人を特定できる署名
いつ作成・承認されて、誰が責任をもつか明確なことは、正式な記録の必要条件である。
サインに関しては、確実に個人を特定できるように、どんなサイン(筆跡や文字)なのかVMP等に署名登録しておく。
またサイン同様、イニシャルや印鑑も登録し、
署名に関わる情報をすべて管理しておくことが望ましい。
世界と異なる日本の習慣
日付として「19.12.01」という記載を見れば、ほとんどの人は「2019年12月1日」だと理解するだろう。しかし、世界中どこの国でも同じかといえば違う。
日本は「年・月・日」と記載することが多い。しかし米国では、「月・日・年」、ヨーロッパだと「日・月・年」が一般的である。このように表記の仕方が異なるので、意味にも食い違いが生じる。
査察官の誤解を避けるためにも、日付の書式やフォーマットを統一するような配慮が必要となる。
日本の習慣が世界の習慣と異なる例として、文字を消す取り消し線の本数がある。私たちは修正したい文字に二重線を引いて消すことが多い。
しかし、米国やヨーロッパでは、一本線がほとんどである。
日本の取り消し二重線は、かなり特殊な習慣といえるので、3極対応を考えるなら、GMP文書で使用する
取り消し線は、一本線を使用するべきである。
なお、記録等の修正では、修正前の記載事項が読み取れるように、取り消し線を引いて該当箇所を修正し、正しい内容、修正の日付、修正者のサイン、修正理由を書き添える。
バリデーション 2019.12.01 医薬 太郎 誤記訂正
バリエーションの記録
決して、消しゴムや修正液・テープを使用してはいけない。修正した事実も記録として残さなければならない。
作業手順を考慮したフォーム作り
各種試験や検査の項目は多岐にわたり、残さなければいけない測定値や判定結果の記録数も膨大である。
記録紙のブランクフォームには、作業を効率的に行うための工夫も必要である。
例えば、次のようなブランクフォームを使用する場合を考える。
日付
|
実測値
|
判定
|
サイン欄
|
2019.12.01
|
9.5
|
合格
|
医薬 太郎
|
2019.12.01
|
9.6
|
合格
|
医薬 太郎
|
2019.12.01
|
9.7
|
不合格
|
医薬 太郎
|
このフォームでは、記録ごとに、日付、実測値、判定、サインを書き込まなければならない。数項目ならともかく、数十、数百にも及ぶ項目が並べば大変な手間となる。
そこで、次のようなブランクフォームにする。
実測値
|
判定
|
9.5
|
合格・不合格
|
9.6
|
合格・不合格
|
9.7
|
合格・不合格
|
【判定値】合格:9.4〜9.6
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日付
|
2019.12.01
|
サイン欄
|
医薬 太郎
|
合格・不合格は選択方式で、サインと日付はまとめて1カ所に記載する。これにより、記入の手間を省くことができる。
また、ブランクフォーム内に、試験の合否を決める判定値を記載しておけば、実測値から合否を判定する際、判定ミスを防止することに役立つ。
作業手順を考慮し、記録紙のフォームを作りこむことは重要である。作業を効率化するばかりではなく、正しい行動を導いてくれる。
正確で、欠けのない記録
記録は、誤解のないよう完全な状態で保存するための配慮が欠かせない。
記録紙の空欄は、書き忘れの誤解を防ぐため、斜線を引きコメントを残すなどして、対象外の項目であることを明示しておく。
2019.12.01 医薬 太郎 斜線
また、コメントや特記事項の欄では、
異常がない場合「なし」と記入する。尚、「特になし」の記入は、少しの異常はあったのではないかととられる可能性があるので避ける。
実測値の生データ(証拠)となるチャートや写真には、後で何のデータであるか混乱しないように、タイトル、サイン、日付、メモなどを付記する。
長期間保存する間に、記録紙が落丁・紛失することも考えられる。紙が剥がれ落ちることを考慮して、割り印、サイン、〆マーク等を印しておいたほうが良い。
また、長期間の保存では、記録の退色や変色にも注意が必要となる。
プロジェクトによっては、コピーと区別するために、青色のボールペンを指定される場合もあるが、GMPではインクに関する要求はない。
しかし、色あせする、コピーができない、読みにくいといった筆記用具の使用は避けるべきである。
チャート紙の中には、感熱紙を用いるものもある。
感熱紙は、時間が経過すると文字が消えてしまうので、あらかじめコピーをとり、コピーとともに感熱紙も原紙として保存する。
色あせて内容は読めなくなっても、生データが存在した証拠になる。
尚、紙の表面に特殊な薬品層が塗られており、表面がツルツルしているのが感熱紙である。
感熱紙は普通紙とは異なり、熱を感知することで「化学反応」を起こし、色が変わるように加工されている。
インクが不要でプリンター(ヘッド)部分が小型化できることから、レジスターの他、各種発券機、電気やガスや水道の検針票、携帯端末、医療機器など、あらゆる用途で幅広く使用されている。
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