無通告査察での指摘事例

無通告査察で医薬品の製造所等は、次のような指摘を受けている。

 

無通告査察での指摘事例(製造)

 

【無通告査察での指摘事例(製造)】

事例1 製造作業担当者が、実際の作業時に個人用メモを見て作業している。
理由 作業手順書、製造記録書では、実際の作業ができないということである。作業を担当するまでのOJTが不足している。もしくは、作業手順書、製造記録書の改訂が必要である。

 

事例2 混合時間が「10分」と記録されていた。しかし、混合を実施した「時刻」を記録していなかった。
理由 データ完全性のため「10分」ではなく、「13:00〜13:10」のように正確な時刻を記録する。

 

事例3 製造作業の途中で機械停止等の不具合が生じたが、その理由や期間及び措置が製造記録に記録されていなかった。
理由 製造時の特記事項は、漏れなく記録する必要がある。

 

事例4 生の記録を照査や査察対応のため、別の記録様式に清書している。
理由 生の記録が廃棄されており、記録用紙の発行管理が不徹底である。(生データ保管の必要性)

 

事例5 廃棄品がずっと放置されている。
理由 良品の製品と廃棄品を間違えるリスクがある。廃棄品は適切な場所に一時保管し、すみやかに廃棄する。

 

事例6 作業者の印鑑をまとめて保管しており、他人の印鑑を自由に持ち出すことができる状況であった。
理由 印鑑所有者による保管管理が必要である。

 

事例7 承認後の製造指図記録書の原本の電子コピーは共有サーバーに保管されていたが、製造管理責任者以外の作業者でもアクセスし、出力することができる状況だった。さらに、ファイルの上書き制限がかけられていないため、内容を書き換えることのできる状況だった。
理由 未承認の内容が指図されることのないように、製造指図記録書の取扱い手順を、適切な運用に改める必要がある。

 

無通告査察での指摘事例(品質管理)

 

【無通告査察での指摘事例(品質管理)】

事例1 初回試験で規格外結果が出たが、試験をやり直して規格内とし、逸脱としてあげていないケースがある。
理由 初回の試験記録を保管しておらず、やり直した理由の妥当性が不明。「不適合」結果が、事実と異なり「適合」となっている恐れがある。

 

事例2 用途不明で出納管理されていない検体が、管理されていない冷蔵庫に置かれている。
理由 再試験に勝手に使用されるリスクがある。すべての検体は出納管理し、承認された保管場所に置く必要がある。

 

事例3 複数ページにわたる製造指図・記録書や試験記録を発行する時に、QA部門が表紙のみに発行印を押して いた。
理由 全ての記録書に対して複製が不可能なシステムを構築し、適切な発行管理を行う必要がある。

 

事例4 作業記録について、署名及び日時の記入が不足している記録が多数あった。
・製品の出庫記録には、出庫作業担当者及び確認者の署名が無かった。
・生菌数試験について培養中、毎日、培地を観察し結果が記録されていたが、それぞれの記録について記入者の署名が無かった。
・試験記録についてQC担当のQAがレビューを行い記録書に署名するが署名を行った日付の記録が無かった。
理由 記録書の不備である。責任の所在を明確にするため、作業記録は正確に記入する必要がある。

 

事例5 管理者が不明の表示のない記録書ファイルや文書が、 居室や倉庫に散在している。
理由 法令で規定された記録の保管期間の完了前に、廃棄されるリスクある。トレーサビリティーがとれるように、文書及び記録の管理が必要である。

 

事例6 製造記録の施錠保管や持ち出し記録の管理を行っていなかった。貸し出された試験記録が、1年間返却されていなかった。
理由 文書の紛失リスクがある。製造記録、試験記録は持ち出し記録の管理徹底を行う。

 

事例7 1名の試験者が、無菌試験の結果判定を行っていた。
理由 客観的なデータが残らない試験項目は、誤判定や不正判定が生じないよう、ダブルチェック等の信頼性の高い手法を取り入れる必要がある。

 

事例8 PST(プロセスシミュレーション)で使用した培地の観察記録を、すべての検体の結果をまとめて「陽性数0」と記載していた。
理由 適切な単位に対して、「試験結果」及び「観察者名」を記録する必要がある。

 

事例9 頻繁にHPLC(高速液体クロマトグラフィー)の再解析が行われていた。
・再解析を実施するための手順は無かった。
・作業者は責任者の許可なしに再解析を実施した。
・作業者は、再解析前のデータは残していなかった。
・責任者は再解析の実態を適切に把握しておらず、行われた再解析の妥当性も確認していなかった。
理由 正当な理由なく再解析が実施され、正確な分析結果が見逃される可能性がある。

 

事例10 HPLC用のPCは、QC職員全てが、データ削除が可能な権限を持っていた。
理由 データ削除については原則行わないことを基本に、権限の見直しを行う必要がある。

 

事例11 HPLC制御ソフトに、監査証跡の機能がなかった。また、データの削除等の制限や検証について規定した手順もなかった。
理由 不適切な操作を予防し、またデータの完全性を検証できるように、現状のシステムや手順を見直す必要がある。