解熱鎮痛薬とは、熱冷ましともいわれ、薬理作用として解熱作用と鎮痛作用とを兼ね備えた薬物群である。
解熱鎮痛薬は、「熱を下げ、痛みを鎮める」というのがセットになっている。
実は、熱を上げるのも、多くの痛みを引き起こしているのも、もともとからだの中にある「PG(プロスタグランジン)」という物質である。
解熱鎮痛薬の多くは、酵素(シクロオキシゲナーゼ)の働きを抑えて、アラキドン酸という物質からプロスタグランジンを作りだす酵素の働きを抑える。
これより、熱が下がり、痛みが鎮まり、炎症も抑えられる。
プロスタグランジンには、胃酸の分泌を調節する働きや、胃粘膜を保護する作用もある。
プロスタグランジンが作られるのをブロックするタイプの解熱鎮痛薬を飲むと、胃を荒らす原因となり、胃腸障害(消化器障害)を起こすことがある。
よって病院では、解熱鎮痛薬と一緒に胃薬が処方されることがある。
発熱や痛みのもとになるプロスタグランジンを抑えるタイプの薬は、子どもがのむと重い副作用を引き起こすことがあるため、原則的に禁止されている。
子ども用の風邪薬には、脳の中にある痛みを感じる部分に働きかけ、痛みを感じにくくする「アセトアミノフェン」という成分が使われている。
また、妊娠中に使っても比較的安全だといわれている。
胃腸障害も少なく、空腹時に服用できるタイプの薬もある。
一般に解熱鎮痛薬には、主に3つの種類がある。
【解熱鎮痛薬 3つの種類】
薬の種類 | 成分の種類 | 効果・副作用 |
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@非ステロイド性抗炎症薬 | ・イブプロフェン ・アスピリン ・エテンザミド ・ロキソプロフェンナトリウム など |
体内のシクロオキシゲナーゼという酵素の働きを止めてプロスタグランジンを作らせないようにすることで痛みを鎮めたり、熱を下げる。
またノドの痛みや筋肉痛、関節炎などの炎症を抑えるのにもよく効く。
胃腸障害(消化器障害)を起こすことがあり、空腹時の服用は避け、食後すぐに服用し、長期間服用しないようする。 |
A非ピリン系解熱鎮痛薬 | アセトアミノフェン |
痛みの伝わりを抑えることで痛みを鎮めたり、体温調節中枢に作用して高めにセットされた体温の設定を下げることで熱を下げる作用がある。
胃の中のプロスタグランジンに関与しないので胃腸への負担が少なく、子供用の解熱鎮痛薬としても使われる。
安全性の高い薬だが、多量に飲みすぎると胃や肝臓を痛めることがあるので用法用量を守って服用する。 |
Bピリン系解熱鎮痛薬 | イソプロピルアンチピリン |
非ステロイド性抗炎症薬と同じようにプロスタグランジンが体内で産生されるのを抑える薬である。
痛みをしずめたり、熱を下げたりする作用は比較的強いが、炎症を抑える作用は弱いのが特徴である。
市販の薬では他の解熱鎮痛成分と配合されている。副作用として、発疹(ピリン疹)などを起こすことがあるので注意が必要。 |
解熱鎮痛薬のOTC医薬品例を次に示す。
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商品名 | イブA錠(エスエス製薬) |
分類 | 第2類医薬品 |
成分 | ・イブプロフェン150mg ・アリルイソプロピルアセチル尿素60mg ・無水カフェイン80mg (2錠中) |
効能・効果 | ○月経痛(生理痛)・頭痛・歯痛・咽喉痛・関節痛・筋肉痛・神経痛・腰痛・肩こり痛・抜歯後の疼痛・打撲痛・耳痛・骨折痛・ねんざ痛・外傷痛の鎮痛 ○悪寒・発熱時の解熱 |
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商品名 | ロキソニンS(第一三共ヘルスケア) |
分類 | 第1類医薬品 |
成分 | ・ロキソプロフェンナトリウム水和物68.1mg(無水物として60mg) (1錠中) |
効能・効果 | ○頭痛・月経痛(生理痛)・歯痛・抜歯後の疼痛・咽喉痛・腰痛・関節痛・神経痛・筋肉痛・肩こり痛・耳痛・打撲痛・骨折痛・ねんざ痛・外傷痛の鎮痛 ○悪寒・発熱時の解熱 |
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商品名 | バファリンA(ライオン) |
分類 | 第2類医薬品 |
成分 | ・アスピリン(アセチルサリチル酸)660mg ・合成ヒドロタルサイト(ダイバッファーHT) 200mg (2錠中) |
効能・効果 | 〇頭痛・月経痛(生理痛)・関節痛・神経痛・腰痛・筋肉痛・肩こり痛・咽喉痛・歯痛・抜歯後の疼痛・打撲痛・ねんざ痛・骨折痛・外傷痛・耳痛の鎮痛 〇悪寒・発熱時の解熱 |
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商品名 | 新セデス錠(塩野義製薬) |
分類 | 第2類医薬品 |
成分 | ・エテンザミド200mg ・アセトアミノフェン80mg ・アリルイソプロピルアセチル尿素30mg ・無水カフェイン40mg (1錠中) |
効能・効果 | 〇頭痛・歯痛・月経痛(生理痛)・神経痛・腰痛・外傷痛・抜歯後の疼痛・咽喉痛・耳痛・関節痛・筋肉痛・肩こり痛・打撲痛・骨折痛・ねんざ痛の鎮痛 〇悪寒・発熱時の解熱 |