自律神経系と医薬品の関係とは!?

神経系とは!?

 

 神経系は、「中枢神経系」と「末梢神経系」とに大別される。

 

 中枢神経系は脳と脊髄せきずいから構成され、末梢神経系は脳や脊髄から体の各部へと伸びている。

 

 

 

 さらに末梢神経系は、随意運動、知覚などを担う「体性神経系」と、呼吸や血液の循環などのように生命や身体機能の維持のため無意識に働いている機能を担う「自律神経系」に分類される。

 

【神経系の種類と違い】

項目 中枢神経系
(CNS)
末梢神経系
(PNS)
体性神経系
(Somatic Nervous System)
自律神経系
(Autonomic Nervous System)
主な構造 脳、脊髄 脳神経、脊髄神経、末梢神経 骨格筋に接続する運動神経と感覚神経 内臓や平滑筋、心筋、腺に接続する交感神経系と副交感神経系
役割 情報処理、統合、指令の発信 CNSからの指令を全身に伝達、全身からの情報をCNSに伝達 意識的な運動の制御、感覚情報の伝達 不随意な生理機能の調節(心拍、消化、呼吸、体温調節など)
医薬品の対象 精神安定剤、抗てんかん薬、抗うつ薬、抗パーキンソン薬 末梢神経障害治療薬、局所麻酔薬 筋弛緩薬、疼痛緩和薬 β遮断薬、抗コリン薬、交感神経作動薬、副交感神経作動薬
治療戦略の違い 神経伝達物質の調整や受容体の調節 神経伝達物質の調整、神経の再生促進 骨格筋や運動神経の直接的な調節 自律神経系のバランス調整(交感神経系と副交感神経系の拮抗作用の調整)

 

自律神経系の働き

 

 自律神経系は、「交感神経系」と「副交感神経系」からなる。

 

 「交感神経系」は体が闘争や恐怖などの緊張状態に対応した態勢をとるように働き、「副交感神経系」は体が食事や休憩などの安息状態となるように働く。

 

 交感神経系と副交感神経系は、シーソーのように働いている。

 

 

 

 日常では、朝、目が覚めると交感神経系が活性化し、身体が活動する準備をする。

 

 夜、眠るときには副交感神経系が活性化し、リラックスして回復する状態を作る。

 

 一方が活性化すると他方が抑制され、必要な生理反応を引き出す。

 

 このバランスが崩れると身体の不調や病気が起こりやすくなる。

 

 異常時、交感神経系が過剰に優位になると、高血圧やストレス関連疾患(慢性疲労症候群など)が起こりやすくなる。

 

 副交感神経系が過剰に優位になると、低血圧や慢性的な疲労感などが起こることがある。

 

自律神経系の主な機能

 

 自律神経系の主な機能は、無意識に働いて身体の内部環境を調節し、生命維持に必要な活動を維持することである。

 

 例えば、緊張すると喉が渇くが、これは交感神経系が優位になるからである。

 

 また、汗などの例外もあるが、交感神経系が優位な時は、体液(唾液、昇水、尿など)が外に排出されにくくなる。

 

【交感神経系と副交感神経系の機能】

効果器 交感神経系 副交感神経系
瞳孔散大→物を見やすくするため(暗所での視覚を向上) 瞳孔収縮(明るい環境での視覚を保護)
唾液腺 少量の粘性の高い唾液を分泌 唾液分泌亢進→消化のため
心臟 心拍数増加→酸素運搬のため(活動の準備) 心拍数減少(リラックスを促進)
末梢血管 収縮(血圧上昇)→酸素運搬のため 拡張(血圧降下)
気管、気管支 拡張→酸素を多く取り込むため(呼吸を促進する) 収縮(呼吸を安定させる)
血管の収縮(緊急時に不要なエネルギー消費を抑える) 胃液分泌亢進→消化のため(食事後の吸収を最適化)
運動低下 運動亢進→消化吸収のため
肝臟 グリコーゲンの分解(ブドウ糖の放出)→エネルギー供給のため グリコーゲンの合成
皮膚 立毛筋収縮(鳥肌)
汗腺 発汗亢進
膀胱 排尿筋の弛緩(排尿抑制) 排尿筋の収縮(排尿促進)

 

自律神経系の伝達物質と医薬品

 

 交感神経と副交感神経は、効果器でそれぞれの神経線維の末端から神経伝達物質を放出し、効果器を作動させている。

 

 交感神経の節後線維の末端からはノルアドレナリン、副交感神経の節後線維の末端からはアセチルコリンが放出される。

 

 ただし、汗腺を支配する交感神経線維の未端では、例外的にアセチルコリンが伝達物質として放出される。

 

 医薬品には、この仕組みを利用したものがある。

 

 例えばプソイドエフェドリン塩酸塩は、交感神経系を刺激して鼻粘膜の血管を収縮させ、鼻の充血(鼻詰まり)を緩和する。

 

【自律神経系の伝達物質と成分の例】

交感神経系
主な伝達物質
アドレナリン(エピネフリン)
ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)
効果器に対する働き
アドレナリン作動成分→交感神経系が優位になる
抗アドレナリン成分→交感神経系が抑えられ、副交感神経系が優位になる
成分の例
アドレナリン作動成分→プソイドエフェドリン塩酸塩、メチルエフェドリン塩酸塩、フェニレフリン塩酸塩
抗アドレナリン成分→フェントラミンメシル酸塩、プラゾシン塩酸塩
副交感神経
主な伝達物質
アセチルコリン
効果器に対する働き
コリン作動成分→副交感神経系が優位になる
抗コリン成分→副交感神経系が抑えられ、交感神経系が優位になる
成分の例
コリン作動成分→ネオスチグミンメチル硫酸塩
抗コリン成分→スコポラミン臭化水素酸塩水和物、ブチルスコポラミン臭化物、チキジウム臭化物