医薬品と食品の違いとは!?

スーパーマーケット等で流通する一般食品と、ドラッグストアや薬局で取り扱われる医薬品は、その性質や要求される品質基準において根本的に異なる。食品と医薬品の主な違いについて、以下の4つの観点から解説する。


違い@ 人の生命および健康に直結する


医薬品と食品の最大の違いは、「人の生命に直結する」点にある。


食品の場合、過剰摂取によって体調不良が生じたとしても、直ちに生命の危機に瀕するケースは極めて稀である。


医薬品製造と食品製造の決定的な違い(生命への影響)を示す比較インフォグラフィック。それぞれの製造ミスが生命に与えるリスクの違いを説明。


しかし医薬品の場合、用法・用量(使用方法と使用量)を誤れば、人体に対して重大な有害作用(副作用)を引き起こすリスクがある。


食品製造における調味ミスは味覚の問題に留まるが、医薬品製造工程における有効成分の秤量ミスなどは、患者の生命を直接的に脅かす事態に直結する。


違いA 品質の良否が外観から判定できない


「品質の良否が外観からわかりにくい」点も、医薬品特有の性質である。
生鮮食品であれば、色調や鮮度などから品質の劣化を消費者が直感的に判断できる。


生鮮食品は外観で品質判断可能だが、医薬品は外観では判断できず専門管理が必要であることを示す図。


時間が経過した野菜や果物は、見た目で腐敗の程度をある程度認識することが可能である。


対して医薬品は、有効成分が規定量含有されているか、品質が担保され使用期限内であるかなどを、視覚などの外観から判断することは不可能である。


違いB 使用にあたり専門家(医師・薬剤師)の指導が必要


食品や飲料は、消費者が任意のタイミングで購入し摂取できる。


医療用医薬品の使用には、医師の診断・処方、医療関係者の説明、薬剤師の指導という厳密なプロセスが必要であることを示す図。


一方、医療用医薬品を使用する際は、その有効性と安全性を担保するため、「医師が患者の病態に合わせて医薬品を選択し、医療関係者が注意事項を説明する」という厳密なプロセスが必須である。


また、薬局においても、服薬回数や用量について薬剤師から専門的なアドバイスを受ける必要がある。


違いC 包装と添付文書が必須である


野菜や果物などの食品は、包装を持たずに陳列・販売されることがある。


医薬品の包装と添付文書の重要性と、品質劣化防止・用法・電子化などの役割を解説したインフォグラフィック。


これに対して、医薬品は必ず「適切な包装と添付文書」が必要である。


錠剤や顆粒剤は品質劣化を防ぐ適切な容器に充填され、用法・保管時の注意事項を記載した文書を添付して、初めて医薬品として成立する。


なお、薬機法改正に伴い、医療用医薬品については紙媒体の添付文書の同封が原則廃止され、「電子化された添付文書」での閲覧を基本とする運用へ移行している。


以上のように、「医薬品」には一般の食品や飲料とは次元の異なる、極めて高い有効性、安全性、品質が法的に要求される。


【ポイント】

1. 秤量・調製工程におけるヒューマンエラー防止とデータ完全性

医薬品製造の基本は「正しい原料を、正しい量で配合する」ことである。生命に直結する秤量ミスを防ぐため、作業者同士のダブルチェックだけでなく、製造実行システム(MES)を活用したバーコード照合や、電子天秤と連動した自動記録システムの導入が不可欠である。これにより、意図的または無意識のデータ改ざんを防ぎ、規制要件であるデータインテグリティ(ALCOA+原則の「正確性」「同時性」など)を担保した確実な製造管理が求められる。


2. バリデーションの実施と「工程で品質を造り込む」思想

外観から品質を判定できない医薬品においては、最終製品の試験検査のみに依存してはならない。「工程で品質を造り込む」というGMPの基本理念に基づき、製造工程が常に一定の品質の製品を恒常的に製造できることを科学的に検証し文書化する「プロセスバリデーション」の実施が極めて重要である。


3. 包装工程における異種品混入(ミックスアップ)の確実な防止

包装や添付文書は、医薬品の品質・有効性・安全性を保証する重要な要素である。包装ラインにおける異種製品や異なる規格の包装資材の混入は、重大な健康被害や製品回収に直結する。ロット切り替え時のラインクリアランス(前ロットの残存物の完全撤去)の徹底や、カメラ検査機などを用いた多重のチェック体制を構築する必要がある。


【用語解説】

薬機法 正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」。
医薬品や医療機器の製造、販売、安全対策などを厳格に規制する法律である。
電子化された添付文書 紙の添付文書に代わり、製品の容器や包装に記載されたGS1バーコード等をスマートフォン等で読み取ることで、PMDA(医薬品医療機器総合機構)のウェブサイトから常に最新の注意事項等を閲覧できる仕組み。
プロセスバリデーション 設定されたパラメータの範囲内で製造工程を稼働させたとき、あらかじめ定められた規格や品質要件に適合する製品を恒常的に製造できることを、科学的根拠に基づいて検証し文書化すること。
ラインクリアランス 製造や包装の工程において、異なる製品への切り替え(ロット変更)を行う際、前ロットの製品、原料、資材、文書などが作業区画内に一切残っていないことを確認・保証し、異種品混入を防ぐ作業。
データインテグリティ(DI) データの完全性。データがすべてのライフサイクルにおいて完全、一貫しており、正確であることを指す。
これを確保するための基本原則として「ALCOA+」が国際的に提唱されている。