医薬品製造の基礎知識

防虫対策

防虫対策の必要性

 

 医薬品の製造場所の中で、とくに高度な衛生管理や微生物管理が行われている無菌製剤の製造室の中にも、虫が成育しているという報告もあり、防虫対策なくして医薬品製造はできない。

 

 ただし虫に関しては、虫の同定、発生状況の調査、あるいは予防対策などを行う場合、かなり高度な専門的知識や経験を要するので防虫専門業者に委託するケースが多い。

 

室内における防虫対策

 

 室内における防虫対策の基本は、食物連鎖を構成する餌となるカビ(真菌)の増殖を防止することや人の皮膚の落下物を含む塵埃の除去である。

 

 また、結露するような部分、温度差が生じる部分などは、カビが生えやすく発生源となりやすい場所(湿度60%以上の施設は要注意)である。温度差、結露によってカビが発生しチャタテムシ、他食菌性昆虫類の発生に繋がる。

 

 室内に常駐する虫への対策は、清掃によって餌となる塵埃の量を下げること、塵埃の溜まり易い場所を除くこと、カビの育ち易い高湿度の環境(結露、水漏れ)をなくすことである。

 

 これらの清掃作業やモニタリングが、適切かつ継続的に行わなけらばならない。そのためには、日常の衛生管理、作業者の教育訓練などを通じて防虫に対する意識や作業の質を高める活動がポイントとなる。

 

外部から侵入する虫への防虫対策

 

 建物への侵入は、多くの場合「持ち込み」によるものである。 資材などに付着しているチャタテムシ類が、荷物とともに持ち込まれ、内部で定着し、他の場所へと拡散していく事例が多々見受けられる。

 

 特に段ボールにはよく見られ、段ボールをクリーンルームに持ち込むことにより、チャタテムシ類も運び込まれてしまう。クリーンルーム内は段ボールなどの紙資材の持ち込み禁止にすることが必要である。

 

 また、外部と室内の間には、虫の侵入を妨げる壁・扉・天井・床・トラップなどのバリアが存在する。

 

 しかし、このバリアには虫の通過を許す隙間が存在する可能性がある。たとえば、点検口、配管配線の隙間、壁や床の繋ぎ目の隙間、扉のガタツキ、排水管のトラップ不良、設計・施工の不良、パッキングなどのシール剤の劣化、壁の亀裂、天井や内壁の隙間などである。

 

 とくに、老朽化した建造物ではその危険性は高い。

 

 これらの亀裂や隙間の発見、補修が防虫には不可欠である。また、近くに発生しやすいゴミや動物の糞、死骸などがないか調べ、発見した場合はきれいに清掃しておくことも必要である。

 

光に誘引されて飛来する虫への防虫対策

 

 多くの昆虫は、人が見ることのできない紫外線領域の光を感じ誘引され、吸い寄せられるように光源に集まる。

 

 夜間、工場の建物近くに虫を誘引しないようにするには、外溝照明はナトリウム灯のような低紫外線の黄色系のランプを用い、建物から20m以上離し、あまり高くないところに設置する。

 

 荷物の搬入は昼間に行い、原則として夕方以降には実施しない。また、トラックヤードの照明は黄色ランプを用い、採光用の窓には紫外線カットフィルムを貼付する。

 

 製造施設内では、低紫外線ランプまたは一般照明器具に紫外線カットフィルターを採用する。

 

 ライトトラップによる昆虫捕獲を行う場合、取り付け方が適切でないと、昆虫の侵入を増加させる。ライトトラップの取り付けには、次のような点に注意する。

 

 

医薬品製造

 

 @侵入した昆虫が生産施設へ進まないように、出入口や廊下で捕獲できるレイアウトを考慮してライトトラップを設置する。

 

 Aライトトラップは、建物開口部から直接見えない位置に設置し、光の漏れがないことを夜間に確認する。

 

 Bライトトラップを取り付けた付近は暗くする。

 

 C生産ラインやコンベヤの上などには取り付けない。

 

 D屋外に捕獲目的でライトトラップを取り付ける場合、建物に接近して設置せず、少なくとも15m以上離す。

 

昆虫の工場内の移動と落下

 

 建物の中に侵入した虫の寿命はそれほど長くなく、侵入して24時間後の生存率は10%を下回るといわれ、虫の死骸の落下位置は照明器具の直下に集中している。

 

 このことから、製造ラインや充填機など、混入の可能性がある設備の真上には照明光源を設置しないようにする。これにより、昆虫異物の混入は非常に低減する。

 

虫の混入防止

 

 医薬品工場の昆虫管理で大切なことは、製造場所に存在する虫に関する情報や分布データなどに基づいて、発生場所や侵入経路を明らかにし、それらを取り除くことである。

 

 具体的な方法は種々あるが、季節変動や月・年単位の時系列的な変化など長期にわたる状況把握も必要である。

 

 種々の環境要因によって変動する昆虫類の動態を把握し、選択すべき対策としては、ハビタット(habitat、生息場所)を撹乱し、環境状況を変える対策が基本となる。

 

 なかでも防虫構造基準は、物理的な構造によって長期的に昆虫類の負荷を抑制するための要件なので、工場の建設や改装の際には、構造や設備に関する基準を反映させる必要がある。

 

清掃の仕方

 

 製造環境の塵埃などから発生する昆虫類は、日常の取り組みで管理しなければならない。

 

 非無菌製剤の製造区域内の塵埃を調べると、最も多く見られるのが繊維質の異物である。これらは、毛羽立ったものやウールなどの肌着を控えるだけでも繊維塵は少なくなる。

 

 またフケや皮膚落屑(ひふらくせつ)もあり、毛も回収されるが頭髪より体毛の方が多い。人の毛で一番寿命が短いのは、まゆ毛及びまつ毛である。

 

 これらの有機物がコナチャタテ科やダニの餌となり、室内で繁殖を繰り返す。したがって部屋の隅々まで、HEPAフィルター付掃除機を用いて完全に除塵する清掃が必要である。

 

 次に、拭き上げる場合は、モップやウエスを左右に動かして拭くのではなく、一方向(ワンウエイ)に拭き寄せ、最後に拭き取り、その汚れを殺菌剤を入れた一つ目のバケツで洗い、さらに殺菌剤を入れた2つ目のバケツで洗うことにより汚れの再付着と殺菌剤の効力の低下を防止できる。

 

衛生管理の効果

 

 衛生管理の効果は、水桶から水が漏れるように、一人でも意識が低い人がいると十分な効果は得られにくい。

 

 

医薬品製造

 

 きれいな作業環境を維持するためには、防虫対策についての教育訓練などを定期的に実施するなど全員参加で衛生管理を行うことが必要である。

 

 

 

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