虫の発生と昆虫相の調査

捕獲される主な虫とその特徴

 

 医薬品工場で捕獲される昆虫は5〜10科、多くても20科程度である。

 

 @噛虫目ごうちゅうもく・・・チャタテムシ類

 

 体長約1mmの無翅昆虫むしこんちゅうで、餌である真菌発生の指標となる。真菌発生の防止には、環境の温度や湿度に注意する。

 

 

医薬品 防虫対策

チャタテムシ

 

 クリーンルームなどの施設で捕獲される代表的な虫がチャタテムシ類で、主にカビなどの菌類と、穀粉(動物飼料など)やフケ・紙類に使用された糊類・剥落した皮膚などの有機物も食べる。

 

 A鞘翅目しょうしもく・・・ヒメマキムシ科、カツオブシムシ科

 

 

医薬品 防虫対策

ヒメマキムシ

 

 ヒメマキムシは体長1〜3mm、カツオブシムシは体長2〜3mmで真菌を食する。

 

 B粘官目ねんかんもく・・・トビムシ類

 

 

医薬品 防虫対策

トビムシ

 

 体長1〜2mmで、餌は真菌。

 

 C総尾目そうびもく・・・シミ科

 

 

医薬品 防虫対策

シミ

 

 体長8〜10mmで、餌は紙などの繊維質、有機物の塵埃で絶食に強い。防虫には埃のたまり易いところをなくすこと。

 

 Dダニ目・・・室内発生のダニ類、外部発生のタカラダニ類

 

 

医薬品 防虫対策

タカラダニ

 

 クモと同じ節足動物で体長は0.3〜1mm、餌は真菌や塵埃中の有機物で清掃の指標となる。屋上や外周で発生し、建物の隙間から侵入する。

 

 D真正クモ目しんせいくももく

 

 体長は1mmで、餌はすべての昆虫。

 

 Eハエ目・・・ユスリカ類、コバエ類

 

 ユスリカは、紫外線に強く誘引される。

 

 

医薬品 防虫対策

ユスリカ

 

虫の発生原因

 

 製造所の虫の数は、環境の良否にかかっている。

 

 室内に常駐する虫は、単に居るだけでなく、餌が存在し、快適な環境であれば増殖する。さらに、その虫を食べる虫が外部から侵入すると、その虫も増え、製品へ混入する可能性も大きくなる。

 

 ここで、最初の餌となるのは、カビ、ヒトの皮膚落下物、塵埃中の有機物であり、それらを餌とする微細な虫(ダニなど)を餌とする虫(クモなど)が繁殖する。いわゆる食物連鎖で増殖する。

 

 外部から侵入する虫は、飛翔性の虫(ユスリカ等)、ドアの隙間・配管、壁のひび割れなどから侵入する徘徊性の虫(ゲジ等)、その他、室内に持ち込む原材料などの外装に付着して持ち込まれる虫などがある。

 

 医薬品工場では、屋内で繁殖するダニ、チャタテムシ、トビムシ、外部から飛来する昆虫ユスリカ類やコバエ類などに注意する必要がある。

 

昆虫相の調査と管理

 

 製造場所における昆虫相の調査は、粘着トラップ、ライトトラップ、塵埃収集などを組み合わせて行う。

 

 得られた昆虫相から、虫の分布状態、発生場所、発生原因、侵入箇所などを推定する。

 

 しかし、測定場所、測定方法、測定時期、データの解析法などが適切でなければ有用な結果は得られない。

 

 これらの調査は、目的、計画、方法などの適切な設定だけでなく、実施する担当者の知識、経験、判断能力も要求され、基礎知識の習得、継続的な能力向上が求められる。

 

 防虫管理のために、各製造現場の担当者、品質部門の担当者、施設や設備部門の担当者などが参加する組織が作られ、調査の計画書作成、確認、報告、承認の作業などをシステム的に行うことが望ましい。

 

 さらに、異常事態が発見されたときの対応には、会社のポリシーも重要である。