平成23年4月20日付け事務連絡「無菌操作法による無菌医薬品の製造に関する指針」のなかの「3.1 品質システム一般要求事項」に以下の記載がある。
11)防虫管理
無菌医薬品製造所は、昆虫類による汚染を防止するため、適切な防虫管理を実施すること。
また、防虫管理について「無菌操作法による無菌医薬品の製造に関する指針」の参考情報「A3無菌医薬品製造所の防虫管理」に以下の記載がある。
A3 無菌医薬品製造所の防虫管理
A3.1 一般要件
無菌医薬品の製造所における防虫管理は,一般の医薬品製造所と同様,製造環境の清浄度レベルを維持するペストコントロールとして重要である.さらに,無菌医薬品の製造所において生息する昆虫類の特定は,カビの発生等に起因する食物連鎖の存在,すなわち微生物学的清浄度レベルの指標となり,また,当該昆虫類が微生物及びその胞子を虫体につけて移動することから無菌医薬品に係る製品の微生物学的管理上からも重要である.
医薬品製造所において捕獲される動物には,昆虫綱,蛛形綱(クモ,ダニ),唇脚綱(ゲジ,ムカデ),等脚類(ワラジムシ)等の節足動物が含まれるが,本指針においてはこれらを総称して「昆虫類」という.
無菌操作区域においても昆虫類が生息していることがある.生息密度が低く,微小な昆虫類については,これらを把握することができるようなサンプリング方法が必要となる.また,無菌操作区域においては外部からの持ち込み,又は侵入する昆虫類は非常に少ないことから,内部で発生する昆虫類(特に食菌性の昆虫類)の管理プログラム(以下「昆虫類管理プログラム」という.)を確立しておかなければならない.
A3.2 昆虫類管理プログラム
1) 清浄区域に見合った文書化された昆虫類管理プログラムを持ち,記録を作成し保管すること.
2) 昆虫類管理プログラムは,次の要件を満たすことが望ましい.
① モニタリングから是正措置までの手順
② 基準値逸脱時の防除対策の手順
③ 基準値逸脱時の後追い調査の手順
④ 食菌性昆虫類が捕獲された場合においては,真菌の汚染源調査の計画
⑤ 塵埃中の有機物を餌とする昆虫類が捕獲された場合においては,清浄計画を見直すこと
3) モニタリングの範囲
無菌医薬品に係る製品の製造所のモニタリングは,その他支援区域を主な範囲とし,その結果や必要に応じて直接支援区域と製品の品質への影響を評価するものとすることが望ましい.構造設備の新設時,工事後等はその対象範囲についても調査することが望ましい.
4) サンプリング方法及びサンプリングサイズ
① 無菌操作区域におけるモニタリングに用いる資材は汚染をさけて搬入すること
② サンプリング方法は製造所に生息する昆虫類の生態から選定し,妥当性のある方法で実施すること
5) 管理基準
① 管理基準値を設定することが望ましい
② 昆虫類の空間分布様式は集中分布を示すものが多く正規分布にならないため,管理基準値の運用においては平均値ではなく最大値による管理が望ましい
③ 内部発生と外部からの侵入とに分けて評価
④ 個体数のほか,生息状況も評価
⑤ 区域別,種類別に評価
6) 是正措置及び予防措置
① モニタリングの結果から,迅速に改善が実施され,効果が確認されること
② 過去の昆虫類の生息状況の傾向を解析し,適切な予防措置を採ること
A3.3 防虫対策
生息が確認された昆虫類の種類に応じた適切かつ効果な防虫対策を実施すること.
1) 対種防除
昆虫類は種類により食性,生活史等生態が様々なので,これらの生態にあわせて種類毎に対策を行う.例えば,塵埃中の有機物を食べている昆虫類の防除は清浄化計画を見直し,食菌性昆虫類であれば真菌の対策を計画する.
2) 真菌の対策
清浄区域において検出される昆虫類の多くは製造所の構造面の不備による真菌の発生に由来することが多いことから,構造面の再確認及び真菌の対策を採ることが必要である.
3) 防虫構造の確認
2)のほか,一般的に外部からの侵入や異常な内部発生がある場合においては,製造所の防虫の機能を再度確認することが望ましい.
4) 殺虫剤の使用に関して
① 基本的に清浄区域においては殺虫剤を使用するべきではない.
② 異常が発生した場合等においてやむを得ず使用する場合においては,製品が汚染されないよう措置を採ること.また,清浄区域の外において殺虫剤を使用するときであっても拡散に注意すること.
③ 殺虫剤を清浄区域において使用した場合においては,その殺虫剤の除去に適した清浄化を実施し殺虫剤の残留がないか確認を行うこと.
④ 製造所において使用する殺虫剤に係る化学物質等安全データシート(MSDS)及び当該殺虫剤の使用の記録を保管すること.
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