新型コロナウイルスの特性を次に示す。(参考:厚生労働省発表データ 2020年4月時点)
これまでに、人に感染する「コロナウイルス」は、7種類見つかっており、その中の一つが、2019年12月以降に問題となっている、いわゆる「新型コロナウイルス(COVID-19)」である。大きさは0.1マイクロメートル(1万分の1ミリ)。
このうち、4種類のウイルスは、一般の風邪の原因の10〜15%(流行期は35%)を占め、多くは軽症。
残りの2種類のウイルスは、2002年に発生した「重症急性呼吸器症候群(SARS)」や2012年以降発生している「中東呼吸器症候群(MERS)」。
コロナウイルスはあらゆる動物に感染するが、種類の違う他の動物に感染することは稀である。また、アルコール消毒(濃度70%)などで感染力を失うことが知られている。
近年、動物由来と考えられる2種類のコロナウイルスが発生しヒトに感染し流行した。
2002年に発生した「重症急性呼吸器症候群(SARS)」や2012年以降発生している「中東呼吸器症候群(MERS)」である。
新型コロナウイルスが動物由来であるとの確定的な証拠は見つかってないが、その遺伝子配列が、コウモリ由来のSARS様コロナウイルスに近いため、コウモリがこの新型コロナウイルスの起源となった可能性が考えられている。
現時点では、飛沫感染(ひまつかんせん)と接触感染の2つが考えられる。
(1)飛沫感染
感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つば など)と一緒にウイルスが放出され、他者がそのウイルスを口や鼻から吸い込んで感染する。
※感染を注意すべき場面:屋内などで、お互いの距離が十分に確保できない状況で一定時間を過ごすとき
(2)接触感染
感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、自らの手で周りの物に触れると感染者のウイルスが付く。未感染者がその部分に接触すると感染者のウイルスが未感染者の手に付着し、感染者に直接接触しなくても感染する。
※感染場所の例:電車やバスのつり革、ドアノブ、エスカレーターの手すり、スイッチなど
国内の感染状況を見ても、空気感染は起きていないと考えられるものの、閉鎖空間において近距離で多くの人と会話する等の一定の環境下であれば、咳やくしゃみ等がなくても感染を拡大させるリスクがある。
米国立衛生研究所などのチームによると新型コロナウイルスの最大残存時間は次のようになっている。
※1 「エーロゾル」と呼ばれる微粒子の状態
段ボール箱の上で1日残存し、鉄やプラスチックの上ではさらに長く留まることができる。
プラスチックの表面には、新型コロナウイルスは最大3日間残存する。
新型コロナウイルス感染症の主要な感染経路は飛沫感染と接触感染であると考えられている。
2020年4月1日現在、食品(生で喫食する野菜・果実や鮮魚介類を含む。)を介して新型コロナウイルス感染症に感染したとされる事例は報告されていない。
なお、食品や食事の配膳等を行う場合は、不特定多数の人と接する可能性があるため、接触感染に注意する必要がある(※)。食器についても同様で、清潔な取扱を含め十分に気をつける。
※接触感染は新型コロナウイルス感染症の主要な感染経路の1つである。
コロナウイルスは熱(70度以上で一定時間)及びアルコール(70%以上、市販の手指消毒用アルコールはこれにあたる)に弱いことがわかっている。
製造、流通、調理、販売、配膳等の各段階で、食品取扱者の体調管理やこまめな手洗い、手指消毒用アルコール等による手指の消毒、咳エチケットなど、通常の食中毒予防のために行っている一般的な衛生管理が実施されていれば心配する必要はない。
WHOからの一般的な注意として「生あるいは加熱不十分な動物の肉・肉製品の消費を避けること、それらの取り扱い・調理の際には注意すること」とされている。
発熱や咳等の呼吸器症状が消失し、鼻腔や気管などからウイルスを検出できなくなった状況を「治癒した」と判断している。
また、この新型コロナウイルスそのものに効く抗ウイルス薬はまだ確立しておらず、ウイルスが上気道や肺で増えることで生じる発熱や咳などの症状を緩和する目的の治療(対症療法)として、解熱剤や鎮咳薬を投与したり、点滴等が実施されている。
対症療法により、全身状態をサポートすることで、この間ウイルスに対する抗体が作られるようになり、ウイルスが排除されて治癒に至ると考えられる。
多くの事例では新型コロナウイルス感染者は、周囲の人にほとんど感染させていないものの、一人の感染者から多くの人に感染が拡大したと疑われる事例が存在する(ライブハウス、スポーツジムや屋形船等の事例)。
また、一部地域で小規模患者クラスターが発生している。
※「小規模患者クラスター」とは、感染経路が追えている数人から数十人規模の患者の集団のことを言う。
急激な感染拡大を防ぐためには、小規模患者クラスターの発生の端緒を捉え、早期に対策を講じることが重要である。
これまでの感染発生事例をもとに、一人の感染者が生み出す二次感染者数を分析したところ、感染源が密閉された(換気不十分な)環境にいた事例において、二次感染者数が特徴的に多いことが明らかになった。(下のグラフ)
こうしたことから、「1.換気の悪い密閉空間、2.人が密集している、3.近距離での会話や発声が行われる」という3つの条件が同時に重なった場所が集団感染が確認された場に共通している。
つまり換気が悪く、人が密に集まって過ごすような空間(密閉空間・密集場所・密接場所)に集団で集まることは避けるべきである。
WHOの知見によれば、現時点で潜伏期間は1〜14日(一般的には約5日)とされており、また、これまでのコロナウイルスの情報などから、未感染者については14日間にわたり健康状態を観察することが推奨されている。
新型コロナウイルスに感染した人は、軽症であったり、治癒する方も多い。
国内の症例では、発熱や呼吸器症状が1週間前後持続することが多く、強いだるさを訴える方が多いようである。
新型コロナウイルスによる肺炎が重篤化した場合は、人工呼吸器など集中治療を要し、季節性インフルエンザよりも入院期間が長くなる事例が報告されている。
高齢者や基礎疾患(糖尿病、心不全、呼吸器疾患など)を有する方では、重症化するリスクが高いと考えられている。
国内での発生事例と武漢からのチャーター便帰国者事例を合わせると、PCR検査陽性の方で症状のあった1,816人のうち、重症(人工呼吸器等を必要とした又は集中治療室に入院した)である方は、約3.4%であった(2020年4月2日現在)。
なお、中国疾病対策センター(中国CDC)によると、2月11日までに中国で新型コロナウイルス感染症と診断された約44,000人のデータによると、息苦しさ(呼吸困難)などを認めない軽症例が80%以上と多くを占めており、呼吸困難が生じる重症や呼吸不全に至る重篤例は20%未満に過ぎないと報告されている。
また一般的に、妊娠中に肺炎を起こした場合、妊娠していない時に比べて重症化する可能性がある。
そのため、
・風邪の症状や37.5度以上の発熱が2日以上続く場合
・強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合
には、最寄りの保健所などに設置される「帰国者・接触者相談センター」に問い合わせする。