不正製造の事例(原薬メーカー)

原薬メーカーの不正製造事例とは!?

 

 原薬メーカーであるY社が不正に医薬品製造をしているとの情報があり、2017年(平成29年)に県・厚労省・PMDAが無通告で立入検査を行った結果、以下の違反事項を確認した。

 

 

 

・アセトアミノフェンの製造において、Y社がPMDAに登録していた原薬等登録原簿(MF)と異なり、工程の途中で中国産アセトアミノフェンを添加し、かさ増しを行っていた。

 

・抗てんかん薬のゾニサミドの製造において、PMDAに登録していたMFに記載された溶媒とは異なる溶媒を使用していた。

 

製造指図書や出荷判定記録書の作成を行っていなかったなど、GMP省令に違反していた。

 

・過去の県による立入検査において、事実と異なる製造記録の提示や報告を行っていた。

 

 など

 

 

 アセトアミノフェンについては2009年から、ゾニサミドは2015年から溶媒を使用していたという。

 

 原薬から様々な医薬品がつくられるため、原薬製造業者の不正が発覚した場合は、その影響範囲が大きくなる。

 

22日間の業務停止命令及び業務改善命令

 

 無通告で立入検査での違反事項を受け、県・厚労省は直ちに同社に対して全原薬の出荷停止を指示。

 

  県は同社に対して、平成29年に22日間の業務停止命令及び業務改善命令を実施した。

 

 こうした不正が「いつ、誰」の指示があったのかは定かではないが、県によると、社長は「違反は知らなかった」と説明。

 

 また、製造部門の担当者は「自分が担当になったときにはすでに中国製を混ぜており、悪いことをしている認識はなかった」と話したという。

 

 なお、厚労省が品質に問題はないとしたため、同社は製品の回収を行っていない。

 

通報から業務停止、出荷再開までの経緯

 

 

 @通報を受け、県、厚労省、PMDAにて立入検査を実施

 

 A県による報告命令 和歌山県による行政処分(業務停止22日間、改善命令)

 

 BY社より改善計画書の提出

 

 C改善計画の実効性、改善の進捗を確認するため、県、厚労省、PMDAにて立入検査を実施

 

 DY社より改善計画書(追補)の提出

 

 Eアスピリン、エテンザミド、サリチルアミド、ゾニサミドの試験製造開始

 

 Fアセトアミノフェンの試験製造開始

 

 G県、厚労省、PMDAにて立入検査を実施

 

 H試験製造の結果、問題がなかったことが確認できたものから出荷再開

 

 

 同社は、不正の動機について「別製品の試作で使った中国製アセトアミノフェンが約13トン残り、在庫処分するためだった」と県に報告した。

 

違反事項に対する改善対応

 

違反事項
アセトアミノフェンやゾニサミドについて、原薬等登録原簿(MF)と異なる製造方法で製造していた。
主な対応

・中国産アセトアミノフェンは使用しないこととし、かさ増ししていた製品は全て処分することとした。

 

・MFと製造方法に齟齬そご(不整合)のあった原薬については、MFの通りに製造することとした。(一部の工程については安全性を確認した上でMFの記載変更を行った。)

 

・試験製造を実施し、製造された製品の試験結果に問題がないことを県・厚労省・PMDAが確認した。

 

違反事項
製造指図書や出荷判定記録書の作成を行っていなかったなど、GMP省令に違反していた。
主な対応

・必要な記録書類を適切に作成し保管するなど、違反事項の改善指導を継続的に実施。

 

・県、厚労省、PMDAがGMP適合状況を実地で確認し、GMP省令に適合していることを確認した。

 

違反事項
過去の県による立入検査において、事実と異なる製造記録の提示や報告を行っていた。
主な対応

・再発防止のための組織体制の構築を以下の通り行った。

 

・これまでの製造管理者を交代させ、他の医薬品製造メーカーで製造管理の経験を有する者を新たに製造管理者として採用した。

 

・抜き打ちでの内部監査手順を制定した。

 

・外部の第3者を監査役として登用した。

 

・全従業員に対する定期的なコンプライアンス教育を実施することとした。