医薬品・医療機器の「回収」とは:関連用語の定義と基本プロセス

回収の定義


「回収」とは、製造販売業者等がその製造販売・製造をし、又は承認を受けた医薬品・医療機器等を引き取ることである。


これには「改修」及び「患者モニタリング」が含まれ、「在庫処理」及び「現品交換」は除外される。また、新製品の発売に伴い、品質・有効性・安全性に問題のない旧製品を引き上げる行為も対象外である。


医薬品や医療機器の用語解説インフォグラフィック。回収、改修、患者モニタリング、在庫処理、現品交換の5つの重要定義を図解とイラストでわかりやすく説明。


改修の定義


「改修」とは、医療機器の製造販売業者等が対象の医療機器を物理的に他の場所に移動することなく、修理、改良、調整、廃棄又は監視を行うことである。


また、医療機器プログラムの場合は、品質・有効性・安全性に問題のない新しいプログラムへ置き換えること、又は修正することを指す。


患者モニタリングの定義


「患者モニタリング」とは、医療機器又は再生医療等製品の製造販売業者等が、対象製品を患者から摘出することなく、当該製品を使用している患者の経過を観察することである。


在庫処理の定義


「在庫処理」とは、対象の医薬品・医療機器等のうち、未販売であるもの、又は未だに製造販売業者等の直接の管理下にあるものについて、製造販売業者等が引き取ることである。医療機器においては、修理、改良、調整又は廃棄することを指す。


ただし、貸与等により、製造販売業者方が所有権を有したまま他者が現に使用しているもの、又は使用目的で他者の場所にて貯蔵しているものに対する行為は除く。


現品交換の定義


「現品交換」とは、保健衛生上の問題が生じないことが明らかであり、かつ当該製品以外の同ロット等に同様の瑕疵かし(本来あるべき機能・品質・性能・状態が備わっていないこと)が生じないことが明らかな場合に、製造販売業者等が対象製品を引き取り交換することである(医療機器の場合は、修理、改良、調整、廃棄又は監視を行うこと)。


回収要否の判断基準


回収の要否及び回収対象の判断に当たっては、以下の観点から総合的に評価し決定すること。


医薬品の回収要否判断基準。安全性、異物混入、不良範囲の特定など3つの観点から「原則『回収』」へのフローをまとめた図解。


(1)有効性及び安全性への影響


  • 何らかの不良により安全性に問題がある場合は回収すること。

  • 安全性に問題がない場合であっても、有効性の欠如等により期待される効能・性能が得られない場合は回収すること。

  • 不良製品について有効性及び安全性に問題がないことを明確に説明できない場合は回収すること。

  • 関係法令や承認事項に違反する製品は回収すること。


(2)混入した異物の種類及び製品の性質


  • 異物が混入・付着しており、保健衛生上の問題が生じないことを明確に説明できない場合は回収すること。

  • 無菌製剤においては、原則として「無菌性保証が確実か否か」を最重要の判断基準とすること。


(3)不良範囲の特定に関する判断


  • 不良がロット全体又は製品全体に及ぶものではないと明確に説明できない場合は回収すること。不良範囲を限定するためには、原則として以下の条件を全て満たす必要がある。


    • 不良発生の原因と工程が特定できること。

    • 同ロットの参考品等により品質に問題がないことが確認できること。

    • GMP省令、QMS省令又は再生医療等製品の関連省令に基づき、適切な不良発生防止措置が講じられていたことを説明できること。

    • GQP省令又はQMS省令に基づき、同様の品質苦情が他に多数発生していないことが確認できること。


  • 当初は不良範囲が限定的とされた場合でも、実際に複数施設で同不良が生じた場合は、発生率を考慮し原則的に回収すること。

  • 大型医療機器等、ロットを構成しない製品について同種他製品に同様の不良がある場合、当該製品群をロットとみなし回収に準じた扱いを行うこと(他製品に及ばないと明確に説明できる場合は現品交換に準ずる)。


回収終了の判断


原則として、市場から回収対象製品がすべて回収された時点をもって回収終了と判断する。ただし、最終消費者への情報提供が必要な場合など、製品特性や回収理由を勘案して判断すること。


埋め込み型の医療機器や再生医療等製品において患者モニタリングを行う場合は、以下の3点を満たした時点で回収終了と判断して差し支えない。


  1. 医療機関への情報提供が終了していること。

  2. 患者モニタリングの方法及び計画を策定していること。

  3. 検診等が実施できないやむを得ない事情を除き、対象患者全員への検診・点検を完了していること。

なお、回収終了とした場合でも、製造販売業者等は引き続き患者の状況に関する情報収集等を行う必要があり、都道府県の薬務主管課がその実施状況を適宜確認する。


医薬品・医療機器の回収終了の判断基準と、回収製品の廃棄ルールをまとめた図解。全製品回収の原則、患者モニタリング条件、保管から廃棄までの手順を解説しています。


回収した医薬品・医療機器等の廃棄


  1. GQP省令等に基づき、回収した製品は他の製品と厳密に区別して保管すること。医薬部外品及び化粧品についてもこれに準ずる。

  2. 回収した製品は回収終了の確認のため終了時まで保管し、回収終了後に廃棄することを原則とする。ただし、回収製品が膨大である場合は、都道府県薬務主管課等の確認を受けた上で適宜廃棄して差し支えない。


【ポイント】


1. QRM(品質リスクマネジメント)に基づくCAPAの運用

回収は事後対応にとどまらず、ICH Q9に基づくリスク評価と、根本原因分析を通じたCAPA(是正措置・予防措置)の確実な実施が求められる。「なぜその不良が生じたのか」を科学的に立証し、同種他製品への波及リスクを論理的に排除できる体制を構築しておくことが、規制当局に対する説明責任を果たす鍵である。


2. 意図しない市場流出を防ぐ厳格な隔離管理

回収された製品が正規の在庫と混同されることは、重大な健康被害や重大なコンプライアンス違反に直結する。物理的な隔離エリア(施錠管理など)の設置に加え、システム上のステータス管理を連携させ、廃棄完了までのトレーサビリティを完全に確保することが重要である。



厚生労働省医薬食品局長の「医薬品・医療機器等の回収について」原文はこちら