不良品をゼロにするには!?

不良品をゼロにするためのアプローチ


不良品をゼロにするためには、製造工程において不良品を「発生させない」ことと、次工程や市場へ「流出させない」ことの二段構えが必要である。


医薬品製造の不良品削減アプローチ。発生と流出を防ぐ二段構えと、リスクに基づく管理で品質とコストを最適化。


発生防止の対策だけでは不十分なケースがあるため、流出防止の検査体制と組み合わせることで、不良品を撲滅する。


すべての工程に高精度な設備を導入し、完全自動化と全数検査を実施すれば、不良品の発生を限りなくゼロに近づけることは可能である。しかし、それには膨大な設備投資を要し、製品コストの観点から現実的ではない。


したがって、品質に直結する重要工程とそうでない工程を科学的根拠に基づき明確に区別し、リスクレベルに応じた品質保証体制を構築する。このメリハリのある管理により、コストを最適化しつつ高い品質を担保することが求められる。


設備保全と定期メンテナンスの徹底


医薬品製造は高度な機械設備に依存しており、設備保全計画的なメンテナンスが必要不可欠である。


製造設備は、稼働前の始業点検、定期的な月次・年次点検を通じ、常に要求仕様を満たす最良の状態を維持しなければならない。


医薬品製造における設備保全と計画的メンテナンスの体系図と、異常察知や品質維持などの効果を示すインフォグラフィック。


適切な保全活動を実施することで、設備の異常を早期に察知できる。摩耗や劣化が進行している部品を予防的に交換し、突発的な故障による製造停止や品質低下を未然に防ぐことが可能となる。


自社内のメンテナンス部門による日常保全に加え、設備メーカーの専門技術者による定期的なオーバーホールも組み込む。体系化された設備管理体制を確立することが、高品質な医薬品の安定供給に直結する。


作業員の品質意識(Quality Culture)の醸成


ヒューマンエラーに起因する品質トラブルは、継続的な教育訓練強固な管理体制によって最小化できる。


機械・設備の正しい操作方法、作業手順の遵守、異常時のエスカレーションルールなどに関する実践的な教育訓練が必須である。


医薬品製造における品質意識(Quality Culture)醸成とヒューマンエラー防止の4つの要素を示す図解


高品質な医薬品を製造するためには、全従業員がGMP基準に基づく製造・品質ルールを厳格に遵守することが大前提となる。


管理監督者は、ルールからの逸脱行動を発見した場合、即座に指導・是正を行わなければならない。
逸脱を看過することは、「ルールは絶対ではない」という誤った認識を現場に植え付け、組織全体の品質意識を著しく低下させる。


品質の重要性は、一度の研修で定着するものではない。朝礼や定期ミーティングでの反復教育に加え、逸脱や不適合が発生した際には必ず品質の重要性を共有し、再認識させる機会とする。
同時に、疑問点や異常を躊躇なく報告・相談できるオープンな風土づくりが不可欠である。


風通しの悪い職場環境ではヒューマンエラーが隠蔽されやすく、重大な品質問題へと発展するリスクが高い。心理的安全性のある職場環境の構築が、トラブルを未然に防ぐ重要な基盤となる。


まとめ


市場への不良品の流出は、企業の社会的信用の失墜のみならず、患者の生命・健康を脅かす重大な事態を引き起こす。


ホンダの創業者である本田宗一郎氏の「メーカーにとってわずかな不良率でも、買った顧客にとっては100%だ」という言葉は、医薬品製造においても深く通じる理念である。


製造バッチにおける良品率が99%であったとしても、不適合な製品を手にした患者にとっては、それがすべて(100%)である。何万分の一の不適合品をも許さないためには、常に120パーセントの品質(絶対的な安全性と有効性の担保)を追求する姿勢が必要である。


【ポイント】

1. リスクベースアプローチに基づく重要工程の特定

すべての工程を過剰に管理するのではなく、品質リスクマネジメント(ICH Q9)の概念に基づき、製品品質に直接影響を及ぼす重要工程を特定し、科学的根拠に基づいた網を掛けることが費用対効果の高い品質保証に繋がる。


2. オープンな品質文化の構築と是正措置(CAPA)

ヒューマンエラーを個人の責任として終わらせるのではなく、システムや手順書の欠陥として捉える視点が不可欠である。現場がヒヤリハットを隠蔽せず報告でき、それを迅速な原因究明と是正・予防措置(CAPA)へと繋げられる組織風土を築くことが、根本的な不良品撲滅への最適解となる。


【用語解説】

GMP Good Manufacturing Practiceの略称。
医薬品の製造管理および品質管理の基準であり、安全で高品質な製品を恒常的に製造するための厳格なルールである。
品質リスクマネジメント 製品のライフサイクル全体を通じて、医薬品の品質に対するリスクを科学的に評価し、コントロール、コミュニケーション、およびレビューするための体系的なプロセス。ICH Q9ガイドラインで規定されている。
フェールセーフ 機械設備が故障したり、作業者が操作ミスをしたりした場合でも、常に安全な状態(被害を最小限に抑える状態)へ移行するようにあらかじめ考慮された設計手法。
CAPA Corrective Action and Preventive Actionの略称。
不適合や逸脱が発生した際に、その根本原因を特定して再発を防ぐ「是正措置」と、潜在的な原因を特定して未然に防ぐ「予防措置」を指す、品質改善の重要プロセス。