クレームとは、医薬品に対する苦情や改善要求のことである。
医薬品は人の命に関わるものであり、全数検査をやってでも顧客に不良を渡してはいけない。
また、クレームが多いと顧客からの信用は失墜し、受注に大きな影響が出ることは避けられず、場合によっては、会社存続の危機になりかねない。
医薬品製造を含むモノづくりにおいては、顧客に不良品を渡さないことが最重要である。
最近では、食品への異物混入を写真付きでツイッターに投稿され、爆発的な速度で情報が広まった例にもあるように、メディア・SNSでの拡散・炎上リスクは大きくなっている。
不良品が多いとその分製造コストも高くなり、次のように企業に与える損害は大きくなる。
1.直接損害
@不良製品の回収費用(代替品・修理費用、運送費用、コールセンター増設など)
A広報・告知費用(社告、記者会見、ユーザー通知など)
B再発防止費用(原因究明・対策費用・設計製造工程の見直し)
2.民事・行政・刑事責任
@製造物責任・品質クレーム・訴訟費用(賠償金・訴訟費用)
A行政からの措置命令・操業停止処分
3.その他の損失
@取引停止・店頭展示抹消
Aレピュテーションリスク(ブランドイメージ、信用の失墜)
品質は顧客が最も気にすることであり、企業の信頼の源泉でもある。
不良品が出てしまったときは、再び不良品を出さないように品質管理を徹底することが大切である。
苦情・クレームがあった場合の対応は、すべての業務において優先することが大切である。対応が遅れるほどお客様の怒りは増し、問題も大きくなる。
その場合、自社の損金を先に考えると対応が自己本位になる。まずはお詫びする、お客様の話を後まで聞く、善後策について話し合う、現場に出向くなどの対応が必要である。
すぐに現場に駆け付けることで信頼を勝ち取る。販売後のクレームはとくに迅速な対応が重要である。
近年、クレームの件数は増加傾向にあり、その内容も複雑化している。
仕事とはいえ、クレーム対応で怒鳴られたりするのはツライものである。
クレーム対応を評価する仕組みをつくること、クレームに対応した従業員のバックアップ体制をつくること、クレームに対応した担当者へのメンタルケアを行うことが必要である。
医薬品は厳しい管理基準のもとで製造されているにもかかわらず、いろいろな原因で回収されているケースが毎年発生している。
その中で、異物混入は最も多く、次いで入り目不足となるが、ともに約30%を占める。
次に、国内のクレーム事例を示す。
異物混入の中では虫、毛髪、金属、プラスチック、ガラスなどがあり、虫の混入は約40%、次いで毛髪が約20%弱、金属が約10%という報告がある。
異物 | クレーム事例 |
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異物混入 |
虫類、毛髪、金属、ガラス片、プラスチック片、繊維状物 |
固形物混入 |
凝集物、粉末、微粒 |
液付着 |
油状物、斑点、汚れ |
入り目不足 | クレーム事例 |
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内容量 |
錠剤不足、欠錠(錠剤抜け) |
内袋数 |
PTP・SPシート不足、アルミ袋不足 |
容器数 |
個装箱不足 |
外観 | クレーム事例 |
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色 |
着色、退色、色調差、脱色、斑点、局所着色 |
形状 |
錠剤大きさ、表面凹凸、塊状化、粉末混在 |
破損 | クレーム事例 |
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固形破損 |
ひび割れ、縁かけ、カプセル割れ、糖衣層剥離 |
内装破損 |
ポケット変形、アルミ箔破れ、シート反り |
容器破損 |
割れ、口欠け、変形、亀裂、破れ、キャップ脱落 |
包装状態 | クレーム事例 |
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接着 |
粒かみ、微粒子かみ、シート接着、アルミ箔しわ、粉洩れ、液飛び散り |
捺印 |
捺印なし、判読不良、退色、捺印位置ずれ |
使用性 |
利便性、保管、収納性、廃棄性 |
封かん |
テープ剥がれ、テープ封なし |
その他 | クレーム事例 |
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作用 |
副作用、効果異常、効果不良 |
匂・味 |
異臭、酸味、苦味、しびれ |
錠剤のクレーム事例を次に示す。