品質に関するガイドライン「ICH Q1〜Q14」とは!?

品質に関するガイドライン「ICH Q1〜Q14」とは


 ICHでは、ISOの考え方をベースに医薬品業界特有の要素を取り入れた品質システムのガイドラインを作成し、公表している。


 品質に関するガイドラインは、ICH Q1から始まり、2026年5月現在ではICH Q1〜Q14まで策定されている。



品質に関するガイドラインの主な内容


 厚生労働省から通知され、国内規制として導入済み(ステップ5)となっている主なガイドライン(2026年時点)を以下に示す。


ガイドライン ガイドラインの主な内容 通知日・
関連リンク
Q1

【安定性】


<Q1A(R2)「安定性試験ガイドライン」>

・ICH安定性ガイドラインの改定版。日米EUの3極において新有効成分含有医薬品の原薬及び製剤の承認申請時に必要な安定性試験成績を示している。


<Q1B「新原薬及び新製剤の光安定性試験ガイドライン」>

・新原薬及び新製剤の承認申請に必要とされる光安定性に関する情報を得ることを目的としている。


<Q1C「新投与経路医薬品等の安定性試験成績の取扱いに関するガイドライン」>

・新投与医薬品等の承認申請時における安定性試験成績の取扱いを示している。


<Q1D「原薬及び製剤の安定性試験へのブラケッティング法及びマトリキシング法の適用」>

・安定性試験における「マトリキシング法及びブラケッティング法」の適用指針を示している。


<Q1E「安定性データの評価に関するガイドライン」>

・承認申請において、安定性データをどのように評価し、再試験期間又は有効期間を設定すべきかを示している。


<Q1F「気候区域III及びIVにおける承認申請のための安定性試験成績に関するガイドライン」の廃止>

・ICHでの合意に基づき、本ガイドラインは廃止された。




1997.5.28
Q1B原文



1997.5.28
Q1C原文



2002.7.31
Q1D原文



2003.6.3
Q1E原文



Q2

【分析法バリデーション】


<Q2(R1)「分析法バリデーションに関するテキスト(実施項目)」>

・日米EUの3極における承認申請に含まれる分析法について、バリデーション実施時に検討が必要な分析能パラメータを記載している。


<Q2(R1)「分析法バリデーションに関するテキスト(実施方法)」>

・上記「実施項目」を補完し、個々の分析法に関連する様々な分析能パラメータの具体的な検討方法に関する指針を示している。




Q3

【不純物】


@<Q3A(R2)「新有効成分含有医薬品のうち原薬の不純物に関するガイドライン」>

・化学的合成法で製造される新原薬中の不純物量、及びその安全性の確認に関する承認申請時の指針を示している。


B<Q3B(R2)「新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドライン」>

・新原薬を用いて製造される製剤中の不純物量、及びその安全性の確認に関する承認申請時の指針を示している。


D<Q3C(R3〜R6)「医薬品の残留溶媒ガイドライン」及び各改正>

・医薬品製造時における低毒性溶媒の使用を勧告するとともに、各種残留溶媒について毒性学的に許容し得る1日曝露許容量(PDE値)の限度値を示している。新たな科学的知見に基づき、適宜対象物質のPDE値の追加・改定が行われている。


I<Q3D「医薬品の元素不純物ガイドラインについて」>

・ICH Q9の品質リスクマネジメントの原則を用いて、製剤中の元素不純物を評価し、管理するためのプロセスを示している。


2002.12.16
@原文



2003.6.24
B原文



1998.3.30
D原文



2015.9.30
I原文
Q4

【薬局方】


<ICH Q4B ガイドライン(薬局方テキストをICH地域において相互利用するための評価及び勧告)>

・Q4B専門家作業部会(EWG)による薬局方テキストの評価・勧告プロセスを示し、ICH地域における相互利用を促進することを目的としている。


<各Annex(事項別付属文書)>

・Annex 1(強熱残分試験法)からAnnex 14(エンドトキシン試験法)など、個別の試験法についてQ4B EWGで評価・合意された結果を示している。


2009.5.26
原文



2009.5.26
Annex 1原文
(※他AnnexはPMDA公式参照)
Q5

【生物薬品の品質】


<ICH Q5A(R1)「ウイルス安全性評価」>

・バイオテクノロジー応用医薬品におけるウイルス汚染の危険性を評価し、ウイルスを排除するためのアプローチを示唆している。


<ICH Q5B「遺伝子発現構成体の分析」>

・組換えDNA技術を用いたタンパク質生産時の遺伝子発現構成体の解析に関する指針を示している。


<ICH Q5C「生物薬品の安定性試験」>

・生物薬品の安定性試験における標準的な手法を示している。


<ICH Q5D「細胞基剤の由来、調製及び特性解析」>

・製造用細胞基剤の由来、調製、および特性解析の標準的アプローチを示している。


<ICH Q5E「製造工程の変更にともなう同等性/同質性評価」>

・製造工程変更時における製品の同等性および同質性を評価するための標準的手法を示している。


2000.2.22
Q5A原文



1998.1.6
Q5B原文



1998.1.6
Q5C原文



2000.7.14
Q5D原文



2005.4.26
Q5E原文
Q6

【規格および試験方法】


<ICH Q6A「新医薬品の規格及び試験方法の設定」>

・新原薬と新製剤に関し、世界規模での単一の規格及び試験方法の設定を促進することを目的としている。


<ICH Q6B「生物薬品の規格及び試験方法の設定」>

・生物薬品の承認申請にあたり、規格及び試験方法の設定とその根拠を国際的に整合させるための一般原則を示している。


2001.5.1
Q6A原文



2001.5.1
Q6B原文
Q7

【原薬GMPのガイドライン】


・原薬(医薬品の有効成分)に関する製造管理及び品質管理(GMP)の国際的な標準基準を示している。

・運用における解釈の不確実性を明確にするため、2016年にQ&A集が通知されている。


2001.11.2
原文



2016.3.8
Q&A原文
Q8 (R2)

【製剤開発】


・製品および製造工程の開発に対する、科学とリスクに基づくアプローチ(Quality by Design:QbD)を記述している。

・QbDは、事前の目標設定に基づき製品および工程の理解を深め、工程管理に重点を置く体系的な開発手法である。

・デザインスペースの概念を導入し、規制要件に対する弾力的な取り組みを可能としている。


2010.6.28
原文
Q9

【品質リスクマネジメント】


・製品ライフサイクル全体を通じた、品質に対するリスクのアセスメント、コントロール、コミュニケーション、およびレビューの系統的プロセスを記述している。

・品質リスクのアセスメントは「科学的知識に基づいていること」「患者の保護に結びついていること」「製品ライフサイクル全体におよぶこと」が求められる。


品質リスクマネジメントプロセス

2006.9.1
原文
Q10

【医薬品品質システム(PQS)】


・適切な品質特性を有する製品を恒常的に供給するためのシステム確立・維持について記述している。

・PQSの要素として「モニタリングシステム」「是正措置及び予防措置(CAPA)システム」「変更マネジメントシステム」「マネジメントレビュー」が含まれ、製造プロセスの継続的改善を促進する。

2010.2.19
原文
Q11

【原薬の開発と製造(化学物質/生物起源由来物質)】


・ICH Q8、Q9、Q10の原則と概念(Qトリオ)を、原薬の開発と製造に関連づけて説明している。

・原材料管理から原薬、製剤に至るまでの一貫した管理戦略の構築、および出発物質・生物起源原材料選定に係る共通理解の促進を目的としている。


2014.7.10
原文
Q12

【製品ライフサイクルマネジメント(PLCM)】


・医薬品のライフサイクルマネジメントにおける技術上及び規制上の考え方に関するガイドライン。

・承認後のCMC変更管理を予測可能かつ効率的に実施するための枠組み(エスタブリッシュトコンディション(EC)や承認後変更管理実施計画書(PACMP)など)を示している。

2021.10.29
関連情報
Q13

【原薬及び製剤の連続生産】


・原薬および製剤の連続生産の開発、導入、およびライフサイクルマネジメントに関する科学的・規制上の考え方を示している。

2023.5.31
関連情報
Q14

【分析法の開発】


・分析法開発における科学的アプローチ(分析法ライフサイクルマネジメントの概念など)を示し、より堅牢な分析法の開発を促進する。

・「ICH Q2(R2) 分析法バリデーション」と相互に補完し合う関係にある。

2025.10.9
関連情報


【ポイント】

1. Q12〜Q14導入による「開発から連続生産までのライフサイクル管理」の高度化

近年発出されたQ12(製品ライフサイクルマネジメント)、Q13(連続生産)、Q14(分析法の開発)により、医薬品の品質管理は新たなステージに突入している。特にQ12のPACMP(承認後変更管理実施計画書)を活用することで、事前のリスク評価に基づいた柔軟な変更管理が可能となり、液剤調製や充填といった製造現場のプロセス改善を迅速に進めやすくなった。また、Q13が示す連続生産や、Q14が求める堅牢な分析法は、リアルタイムでの品質保証を前提としているため、機器のオーディットトレイルを含めたより厳格なデータインテグリティ(DI)対応が求められる。


2. Qトリオ(Q8, Q9, Q10)から発展した継続的改善のサイクル構築

Q12以降の新しいガイドライン群は、既存のQ8(製剤開発)、Q9(品質リスクマネジメント)、Q10(医薬品品質システム)といった「Qトリオ」の基盤の上に成り立っている。ガイドラインを単なる規制として捉えるのではなく、これらを統合的かつ戦略的に運用し、逸脱発生時には根本原因究明に基づくCAPA(是正措置・予防措置)を確実に機能させることが重要である。この一連のシステムを製造現場レベルで定着させることが、安定供給の維持や品質不良の未然防止に直結する。



 

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