医薬品品質システム「ICH Q10」とは!?

「ICH Q10」とは!?

 


ICH Q10とは…製薬メーカーや原薬メーカー、バイオ医薬品、バイオテクノロジーを対象とした、「PQS:Pharmaceutical Quality System(医薬品品質システム)」と呼ばれるガイドラインである。
 

 

 ICH Q10(医薬品品質システム)は、製薬企業のための品質マネジメントシステムのモデルであり、 製品ライフサイクルの全期間を通じて実施し得る。

 

 医薬品製造レポート

 

 ICH Q10は、GMPや製剤開発(Q8)、品質リスクマネジメント(Q9)を補完する包括的なアプローチを紹介しており、医薬品の品質および安定供給を強化し、イノベーションと継続的改善を促進し、製剤開発と製造活動の連携を強化するものである。

 

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品質マニュアルとは!?

 

 品質マニュアルは、ICH Q10の要件であり、PQS(医薬品品質システム)の最上位文書である。

 

 品質マニュアルでは、GMPだけではなく、探索、非臨床試験(GLP他)、臨床試験(GCP)、製造(GMP)、配送(GDP)を含めた医薬品企業全体の品質保証に関して網羅していなければならない。

 

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 品質マニュアル又は同等の文書化された取り組みが確立され、その中には次の医薬品品質システムに関する記述を含まなければならない。

 

 (a) 品質方針

 

 (b) 医薬品品質システムの適用範囲

 

 (c) 医薬品品質システムのプロセス並びにそれらの順序、関連性及び相互依存性の特定

 

 (d) 医薬品品質システムの中での経営陣の責任

 

 

 品質マニュアルはプロセスを網羅し、リスクに応じた品質管理・品質保証の仕組み(品質システム)が記載されていなければならない。

 

 通常、品質マニュアルは経営者が作成する。経営者は規制要件を遵守し、各プロセスにおける品質管理、品質保証の仕組みについて品質マニュアルにその方針を記載するのである。

 

 

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 なぜ同じ規制要件を参照していながら、各社によって品質マニュアルが異なるかというと、製造販売している製品が異なるためである。

 

 製品が異なればリスクが異なる。品質マニュアルは当該医薬品のリスクに応じて適切なレベルで作成しなければならない。

 

経営陣の責任

 

 工場のみならず、経営陣という会社そのものの責任が求められているのがICH Q10の大きな特徴の一つである。

 

 リーダーシップは、品質に対する全社的なコミットメントを確立し、及び維持するために、また、医薬品品質システムの実効性のために、必要不可欠である。

 

 

 【経営陣の責任】

 

(a) 上級経営陣は、品質目標 を達成するために、医薬品品質システムが有効に機能していること、また、役割、責任及び権限が規定されており、会社全体にわたり伝達され実施されていることを確実にする最終責任を有する。

 

(b) 経営陣は以下のことを行わなければならない

 

 (1) 実効性のある医薬品品質システムの設計、実施、モニタリング及び維持に参画すること

 

 (2) 医薬品品質システムに対する、強力で目に見える形の支持を明確に示し、組織全体における実施を確実にすること

 

 (3) 品質に関する問題を適切な役職の経営陣に上げるために、適時で有効な情報伝達及び上申プロセスを、確実に存在させること

 

 (4) 医薬品品質システムに関連する全ての組織ユニットの個々人及び組織全体の役割、責任、権限及び相互関係を規定すること

 

 これらの相互のやりとりが組織の全階層に確実に伝達され、理解されるようにすること

 

 医薬品品質システムのある種の責務を満たす権限を有している独立した品質ユニット/部門は、各極の規制により要件化されている

 

 (5) 製造プロセスの稼働性能及び製品品質並びに医薬品品質システムに対するマネジメントレビューを実行すること

 

 (6) 継続的改善を推奨すること

 

 (7) 適切な資源をコミットすること

 

 

品質方針

 

 品質方針は、品質に関する企業全体の意図・方向を記述する方針(ポリシー)である。

 

 

 (a)上級経営陣は、企業の品質に関する全体的な意図及び方向を記述する品質方針を確立しなければならない。

 

 (b) 品質方針は、適用される規制要件に適合することを求め、また、医薬品品質システムの継続的改善を促進しなければならない。

 

 (c) 品質方針は、企業の全ての階層の人員に伝達され、理解されなければならない。

 

 (d) 品質方針は、継続的な有効性について定期的にレビューされなければならない。

 

 

 品質方針は、簡潔で、わかりやすい表現で記述する。

 

【品質方針の例】

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 また、職場に掲示したり、携帯カードを配布し、いつでも見られるように周知する。さらに、ホームページにも記載し、顧客にも表明する。

 

品質計画

 

 工場長は品質方針を実現するため、必要な品質目標を策定する。

 

 品質目標には、その進捗度を測るため、できる限り業績評価指標を設定する。

 

 

 (a)上級経営陣は品質方針を実施するため必要とされる品質目標が規定され、及び伝達されることを確実にしなければならない。

 

 (b) 品質目標は企業の関与する全ての階層から支持されなければならない。

 

 (c) 品質目標は企業の戦略に合致し、品質方針と整合していなければならない。

 

 (d) 経営陣は品質目標を達成するため、適切な資源及び訓練を提供しなければならない。

 

 (e) 品質目標に対する進捗度を測る業績評価指標が確立され、モニターされ、定期的に伝達され、及び必要に応じて医薬品品質システムのマネジメントレビューが行われなければならない。

 

 

 品質目標は、品質マネジメントレビューの結果に基づいて定期的に見直す。

 

PMDAの「品質マニュアル」参考例はこちら

 

厚生労働省医薬食品局審査管理課長「医薬品品質システムに関するガイドラインについて」原文はこちら