PIC/Sとは!?

PIC/Sとは


 PIC/S(Pharmaceutical Inspection Convention and Pharmaceutical Inspection Co-operation Scheme)とは、医薬品査察協定及び医薬品査察協同スキームのことであり、各国の医薬品査察当局から構成される国際的な枠組みである。



 1970年に締結された医薬品査察協定(PIC)を母体とし、1995年からは協定締約国以外の国・地域を含む各国の医薬品査察当局が自発的(ボランタリー)に参加するスキームとして発足した。医薬品GMPに関する指針を作成し、査察基準の国際整合性を図るとともに、当局間の相互査察を促進するための活動を続けている。


加盟国・機関


 2026年5月現在、PIC/S(医薬査察協定・医薬査察共同スキーム)には、世界で57の査察当局が加盟している。現在、中国やロシア、フィリピン、カザフスタンなどの当局も加盟申請やその準備段階にあり、今後も拡大が見込まれている。


 日本からは、厚生労働省、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)及び各都道府県の査察当局が、2014年7月に正式加盟を果たした。


PIC/Sの意義


PIC/Sの主な目的は、GMP分野において共通の基準を設け、各国の査察官にトレーニングの機会を提供することによって、世界的な査察基準の整合性を確保することにある。



本スキームは加盟当局間の協力関係を強化し、GMP基準の国際化を推進するものであるが、条約のような法的な拘束力は有していない。したがって、不遵守に伴う直接的な法的罰則は規定されていない。


しかしながら、グローバル基準に整合させることで、以下のような多大なメリットがもたらされる。




  • 新薬承認審査期間の短縮

  • 他国当局の査察結果の活用(重複査察の省略・軽減)

  • ダブルスタンダード(二重基準)の解消

  • 医薬品供給のグローバル化の推進

  • 規制要件対応に伴う経費の削減

  • 使用者(患者)の保護および安心・安全の確保


日本初の総会が富山県で開催


 2019年、PIC/S総会及びセミナーが日本で初めて富山県にて開催された。


 本総会・セミナーには国内外の「医薬品の製造及び品質管理(GMP)査察担当者」が一堂に会し、無菌医薬品の品質保証を主要テーマとしたワークショップ等が実施された。


医薬品製造の基礎知識


 日本で開催された総会では、2020〜2021年のPIC/S議長としてアイルランド医療製品規制庁(HPRA)のAnne Hayes氏が選出されたほか、データインテグリティ(データの信頼性確保)や製造設備共用に関するリスク評価・管理のガイダンス検討状況などが報告された。


 また、併催されたセミナーでは国内外から約150名の医薬品GMP査察担当者が参加し、無菌医薬品の品質保証に関するビデオ演習等の実践的なワークショップが行われた。これにより、参加国・地域のGMP査察能力向上に大きく寄与したと高い評価を得ている。


 富山県で開催された本セミナーの成功は、PIC/S内における日本の規制当局(PMDA等)のプレゼンスを向上させ、技術的知見の蓄積および加盟当局としての貢献という両面において、国際的な信頼を確固たるものとする契機となった。


【ポイント】

  1. 無菌・液剤製造における汚染管理戦略(CCS)の構築

  2019年の富山セミナーでも主題となった「無菌医薬品の品質保証」は、PIC/S GMP Annex 1の改訂により、より包括的な「汚染管理戦略(CCS: Contamination Control Strategy)」の策定が求められるようになった。液剤製造においては、微生物汚染だけでなく、設備からの微粒子発塵や交叉汚染のリスクを施設設計・設備管理・運用手順(SOP)の全方位から評価し、継続的にモニタリングする体制が必要不可欠である。


  2. QRMに基づく継続的改善(CAPA)の定着

  PIC/S基準への適合は、単にルールを守ることではなく、品質リスクマネジメント(QRM)の考え方に基づき、システムを継続的に進化させることにある。製造現場における逸脱や異常、さらには設備の安全性向上(例:機器への安全装置の追加実装など)に至るまで、根本原因を究明し、実効性のある是正措置・予防措置(CAPA)を確実に実施・記録する企業文化の醸成が、査察対応の最大の鍵となる。



【用語解説】

PIC/S 医薬品査察協定及び医薬品査察協同スキーム(Pharmaceutical Inspection Convention and Pharmaceutical Inspection Co-operation Scheme)。各国の医薬品査察当局から構成される国際的な枠組み。
PMDA 独立行政法人医薬品医療機器総合機構。日本の医薬品や医療機器の審査、安全対策、健康被害救済などを担う公的機関。
無菌医薬品 注射剤や点眼剤など、製造過程で無菌状態が厳密に求められる医薬品のこと。高度な品質保証体制が必要とされる。
ダブルスタンダード 二重基準。輸出向けと国内向けなど、対象や国によって適用される基準が異なる状態のこと。PIC/S加盟による基準の共通化で、この解消が期待される。
データインテグリティ データの完全性・正確性・一貫性。医薬品製造においては、記録やデータが改ざんされず、正確かつ信頼できる状態であることが厳格に求められる。


 

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