製造されたひとつひとつの医薬品が全て問題ないものと断言できるであろうか。
製造した医薬品をすべて開封して検査し、合格を確認することはできない。しかし、これを保証しなくては安心して医薬品を製造することができないのである。
そこで、医薬品を何回製造したとしても、プロセスや製造環境が安定して稼働し、予測した品質の製品が生産できることを科学的手法により証明することが、何よりも重要となる。
バリデーションは、一般に、「あらかじめ決められた規格と品質に合致する製品が恒常的に製造されることを高度に保証し、それを文書化すること」と定義される。
医薬品の製造過程や品質管理において、設備、工程、手順などが、期待される結果となることを科学的根拠に基づき検証し、これを文書化して、製造した医薬品の品質を実証する。
つまり、医薬品の品質が守られるようにどんな条件で製造するか、何を測定すればよいのか、測定データのばらつきは許容範囲かなどを検討し、科学的妥当性が担保された製造条件を決定していくことである。
医薬品業界においてハードウェアを設計、製作し、現地へ据え付けを行い、設備を稼働させる際には、その各ステップにおいてバリデーションが必要となる。
1、製造工程
2、製造を支援するシステム
3、洗浄等の作業
設備または機器単位ごとのバリデーションが求められる。
また日本では、バリデーションを実施する場合について以下の3つと定義している。
@新たに医薬品の製造を開始する場合
A製造手順等製品の品質に大きな影響を及ぼす変更がある場合
Bその他製造管理及び品質管理を適切に行うために必要と認められる場合
これらに該当する場合は自社で運用しているバリデーション手順に従い、適切なバリデーションを実施しなければならない。
具体的なバリデーションの種類は下記のようなものがある。
・プロセスバリデーション
・洗浄バリデーション
・支援システムバリデーション
・分析法バリデーション
・包装バリデーション
・輸送のバリデーション
・無菌バリデーション
・コンピュータバリデーション 等
バリデーション手法には、下記のアプローチが存在している。
@予測的バリデーション
予測的バリデーションは、工業化研究の結果や類似品目に対する過去の製造実績(治験薬製造やパイロットプラントにおける製造データ)等に基づいて、医薬品の品質に影響を及ぼす変動要因(原料および資材の物性、操作条件等)を特定する。
そして、その変動要因に対する許容条件を事前に予測し、期待される結果を定義した上で、その許容条件が目的とする品質に適合する医薬品を恒常的に製造するために妥当であることを検証する。
医薬品産業におけるプロセスエンジニアリングはユーザー要求があり、それを展開する設備・装置・機械等が性能通りに出来上がっていることをクオリフィケーションとして検証するため、ほとんどがこの予測的バリデーションとなる。
A同時的バリデーション
同時的バリデーションは製品の通常生産に合わせて行うバリデーションであり、限られたロット数のみを製造する場合や、まれにしか製造しない製品、すでにバリデートされている工程を改良して製造する場合などに用いられる手法である。
B回顧的バリデーション
回顧的バリデーションは、過去の製造記録および試験管理記録を使用して行うプロセスバリデーションである。
過去の製造において、品質特性と工程パラメータの識別ができていたか、工程内試験が実施され管理されていたか、重要工程異常、製品不適合、設備不具合がなかったか、不純物プロファイルは確立されているかを調査する。
バリデーションマスタープラン(VMP)は、大規模なプロジェクトなどで多数の機器や支援設備が同時に制作される場合に、バリデーションの進め方について方針をまとめたものである。
バリデーション基準では「大規模なプロジェクトのように、バリデーションの対象範囲が広く、個別の計画書が複数ある場合には、バリデーション全体を総括して管理するためのマスタープランの必要性について検討し、その結果を記録すること。」とされている。
VMPの目的は次の3つがある。
・Validation作業の全体と組織がわかるようにする。
・Validation作業の内容と計画がわかるようにする。
・Validationされるべき項目とスケジュール
VMPは、管理者にはバリデーションを実施するための時間とコストについて、実施するチームメンバーには役務と責任について、査察官にはバリデーションへのアプローチと遂行組織の準備について、おのおのが理解できるように書かなければならない。