バイオ医薬品とは!?
バイオ医薬品とは、有効成分がタンパク質由来(成長ホルモン、インスリン、抗体など)、生物由来の物質(細胞、ウイルス、バクテリアなど)により産生される医薬品のことである。
これらは化学合成の低分子医薬品に比べて分子が大きく、構造が複雑であり、その特性や性質は一般に製造工程そのものに依存する。
バイオ医薬品はバイオテクノロジーを用いて創製される医薬品で、人間の体内にある生体分子(酵素、ホルモン、抗体など)を応用して作られるものである。
バイオ医薬品は、人体が自然に産生する分子の構造に似ているので、多くの病気において高い治療効果があると同時に、病気の診断にも役立つ。
過去30年間、バイオ医薬品における医学的進歩により、ガン、糖尿病、C型肝炎及び慢性腎不全のような多くの慢性病だけではなく、血友病、ファブリー病、発育不全、多発性硬化症及びクローン病などのまれな病気も治療対象となってきた。
バイオ医薬品は、がんや自己免疫疾患等、難治性疾患への治療効果が期待できるとともに、有効成分がタンパク質であり、標的分子への特異性が高いため、オフターゲットによる副作用が少ないのも利点である。
バイオ医薬品の恩恵により、世界中で3億5千万人以上の患者が、より健康的な生活を送ることができるようになっている。
バイオ医薬品の剤形は、ほとんどが注射剤(無菌製剤)である。
バイオ医薬品はタンパク質でできているため、口から飲むと消化酵素の作用を受けて分解されてしまう。そのため、現時点で飲み薬はなく、主に静脈内や皮下などに注射して投与する。
注射剤でないバイオ医薬品は、トラフェルミン噴霧剤(褥瘡の薬)、トラフェルミン歯科溶液、ドルナーゼ アルファ吸入剤(嚢胞性線維症の薬)等である。
また、バイオ医薬品は全て医療用医薬品で一般用医薬品はない。
バイオ医薬品は、患者の体内で、タンパク質−タンパク質、細胞−細胞の複雑な相互作用を妨げたり、促進したり、または置き換わって作用するように設計された大きな分子である。
糖尿病の場合、組換えDNA技術によって生産されたヒトインスリンは、 世界で初めてバイオテクノロジーで製造された医薬品であり、患者に不足しているタンパク質(インスリン)を補充する。
バイオ医薬品はヒトの体内で起こっている疾病に関する生物学の非常に深い理解に基づいて開発されており、疾病の特異的要因を標的としたり、疾患の症状を和らげることができる。
【バイオ医薬品による治療の例】
●糖尿病治療・・・インスリン不足を補う様々なインスリン製剤など
●貧血治療・・・エリスロポエチン不足を補う様々なエリスロポエチン製剤など
●がん治療・・・抗がん剤治療の副作用である好中球減少症を軽減する様々なG-CSF製剤など
バイオ医薬品は、標的分子への特異性が高いことや、代謝されるとアミノ酸に分解されることなどから、低分子医薬品と比べて標的分子を介さない有害反応は出にくいとされているが、有害反応がないというわけではない。
バイオ医薬品においても副作用が起こりえる。原因は有効成分の効き過ぎ、有効成分が複数の作用を持つこと、剤形が作用する分子が複数の機能を持つこと、などに起因する。
また、注射に伴う反応(インフュージョンリアクション:注射や点滴投与時あるいは投与後24時間以内に起こる過敏反応のこと)も報告されている。
患者さんに起こった副作用の情報は、医療機関から厚生労働省や製薬企業に報告され、今後の安全対策に活かされている。
ガンとの戦いに勝つためには、診断方法、治療方法及び予防方法が共に進歩して行くことが不可欠である。バイオ医薬品はバイオマーカーの発見と開発においても役割を果たしている。
今日バイオマーカーは、ガンの危険性予測、ガンの診断、そして効果が期待できる治療方法の特定の手助けとなっている。
バイオ後続品とは、バイオシミラーともいわれ、先行バイオ医薬品と同等/同質の品質、安全性および有効性を有し、異なる製造販売業者により開発される医薬品をいう。
バイオ後続品は、先行のバイオ医薬品に“類似している”が、“同じではない”医薬品である。
特許が切れた化学合成医薬品の後発医薬品を製造するのは比較的簡単である。これは単純で同定可能な構造をもつ安定な化学合成分子を複製するからである。
一方で、バイオ医薬品は複雑な分子構造を持つことに加え、特有の製造工程が要求されるため、バイオ後続品の製造は遥かに複雑になっている。
実際に、化学合成医薬品の場合と異なり、バイオ後続品が先行バイオ医薬品を正確に複製することは不可能である。
科学を基本とした医薬品の規制は、患者の安全を守るために必須である。このため、バイオ医薬品の複雑さを考えると、バイオ後続品の場合、化学合成医薬品の後発医薬品に対する規制以上に明確な基準が必要となる。
規制当局は、バイオ後続品の固有の性質に応じた特別な手順、特別な開発及び評価の指針の必要性を、益々認識してきている。
これらの指針は、バイオ後続品の品質、安全性、及び有効性が先行バイオ医薬品と高い類似性を持つことを示すために、徹底的な分析による特性解析と品質評価、簡略化した前臨床試験と臨床試験を行うことを要求している。
バイオ医薬品は、特異性が高い治療を要する多くの慢性及び急性疾患をターゲットとする、現代医療における重要で不可欠な医薬品である。
このバイオ医薬品を使用することにより個々の患者の生活を改善し、ひいては社会に利益をもたらす。バイオ医薬品の更なる研究及び開発は、増加し続けている多くの病気を治療する可能性を広げる。
そしてその知的財産所有権を保障することは、将来のバイオ医薬品のイノベーションのための重要な動機付けとなる。
今後更に多くのバイオ後続品が市場に参入すると、規制当局は各国間の規制の枠を超えて複数の地域をカバーする包括的な規制を整備する必要がある。
そして規制当局は、医薬品の使用と医療サービス提供者の処方箋発行の実態をモニターするための医薬品安全性監視システムといった課題を検討する必要がある。
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