医薬品製造の基礎知識

医薬品の品質管理

医薬品製造時の品質管理

 

 薬は人体に作用し、少量で効果を発揮するものだけに、その製造はきわめて厳格な管理のもとで行わなければならない。改正薬事法にて、製造販売業と製造業が完全に分離された。

 

 製造販売業は製造等を行い、製造・輸入した製品の販売・賃貸・授与を業とする。ただし、製造は他に委託できる。製造販売業者は製品の品質管理(GQP)、製造販売後安全管理(GVP)について責任を負うことになった。

 

 製造業は製品の製造のみを業とし、製造業者に対して、国内では“医薬品の製造管理及び品質に関する規則”と“薬局等構造設備規則”が定められており、これらをさしてGood Manufacturing Practice(GMP)という。このGMPの概念にのっとった医薬品の品質管理とは、最終製品の品質試験を行って品質の確認に重点をおく管理方法ではなく、原料の受け入れから最終製品の出荷に至るまでの全製造工程にわたる組織的な製造管理と生産計画に対応する試験実施計画に基づいた組織的な品質管理方法である。

 

管理体制の整備

 

 製造販売業者は管理体制として、品質管理から製造販売後の安全管理までと幅広いため、これらの業務を統括し、組織的に果たすために総括製造販売責任者を置かなくてはならない。さらにGQPに則り品質管理部門を独立して設け品質管理保証責任者を置かなくてはならない。

 

 薬事法第17条第1項で総括製造販売責任者等の設置に関して、医薬品の製造販売業者にあっては薬剤師を置かなければならない。ただし、その品質管理及び製造販売後安全管理に関し薬剤師を必要としないものとして厚生労働省令で定める医薬品についてのみその製造販売をする場合においては、厚生労働省令で定めるところにより、薬剤師以外の技術者をもってこれに代えることができる。

 

 一方、製造業者は信頼性の高い品質管理体制が必要で、製造管理部門、品質管理部門が独立し、それぞれの管理部門に責任者を置かなくてはならない。薬事法第17条第3項にて医薬品の製造業者は、自ら薬剤師であつてその製造を実地に管理する場合のほか、その製造を実地に管理させるために、製造所ごとに、薬剤師を置かなければならない。ただし、その製造の管理について薬剤師を必要としない医薬品については、厚生労働省令で定めるところにより、薬剤師以外の技術者をもってこれに代えることができる。

 

文書による規定の作成

 

 作業担当者が知識、技能として習得していた製造手順などを誰もが理解できる文書に表した標準操作手順書(SOP)を作成することによって、作業のルール化を行う。

 

 また、製造工程を科学的に検証(バリデーション)し、作業の標準化を図る。

 

記録の作成・保管

 

 製造販売業者は、GQPにのっとり品質標準書、品質管理業務手順書を作成しなければならない。

 

 一方、製造業者は、SOPのとおりに製造し、品質試験を行い、出荷の可否について検討された旨の記録を作成し、定められた期間、保存する。

 

 GMPでは、規定(ルール)を決め、ルール通りに実施し、記録を残すことが義務付けられている。一定のルールに従い、原料の出納記録から製造記録まで、一連の製造に関する記録を作成し、定められた期間、保存する。

 

医薬品流通時の品質管理

 

 GMPの理念にのっとって、製品化された医薬品は、流通段階では医薬品の供給と品質管理に関する実施規定(GSP)によって医薬品の品質が確保され、医療機関へと流通される。ここで、卸売販売業者は営業所ごとに薬剤師を置き、その営業所を管理させなければならない。ただし、卸売販売業者が薬剤師であって、自らその営業を管理するときは、この限りではないとされている。医療機関では、医薬品の適正使用に関する規範として、Good Using Practice(GUP)あるいは調剤のあり方として、Good Dispensing Practice(GDP)の概念を基に管理される。

 

 GUPとは、医療機関における医薬品の品質管理に対してGMP理念の導入を図る考え方であり、設備などのハードに加えて薬効および品質を確保するための服薬の意義、正しい服薬方法の説明、保管方法などの患者への情報提供など、ソフト面も含めて考えられる。ハード面では、汚染や品質低下の防止のためには薬局内の環境設備によって環境に起因する汚染防止に努める必要がある。

 

 Good Pharmacy Practice(GPP)は、1993年国際薬学会議で承認され、ソフト面での薬局業務基準として定められている。また、病院などの薬局内では、院内製剤の調製も行われており、これらについてはGMPの理念が導入されなければならない。院内製剤の調製においても、SOPを用い、業務のダブルチェックの徹底、品質の管理・試験、バリデーション管理が必要となる。さらに、文書にし、記録を保管することも必要である。

 

医薬品製造

 

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